ATC SCM50P(38)

前回でHigh / Midはアナログクロスオーバーは完成していますので、
今度はMid / Lowをデジタルクロスオーバーで設計していきます。
今回はIPD1200のDSPを使っています。

スピーカーを70cmの台にあげ、1.5mの距離でミッド・ウーファーの中点で測定していきます。今回はこの測定条件が限界、これ以上は我が家では無理ですね… ディナウディオ社のように体育館みたいなスケールでの測定・設計ができればもっといろんな性能が見えるのでしょうが、やむを得ません。

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純正は25年前の製品で、アナログ・バターワース4thの設計でした。
今回はデジタル・LR4の設計です。やはりフレキシビリティが高く、このレベルのユーザーインターフェースとパラメーターを備えたコンシューマーチャンネルデバイダーがないのは残念なことです。一方で、IPD1200/2400をもう1台買い足すか、Lake LM26の導入も考えなくはなかったですがコンシューマーの家庭使用では不慮の事態も想定してツィーターにはコンデンサが入っているほうが個人的には安心だったりします。

というわけでざっくり完成です。

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概ね、想定の性能に仕上がっていそうです。
ちょっとDSPをいじれば±1.5dBに仕上げることもできそうですが、あまり意味はないかな…
25年前のユニットですし、SM75-150のためにも500Hz LR4クロスのうえ、ミッドのf0である300Hzには LCR notch + DSP active notchとしてみました。長持ちしてくれるといいのですけど。

さて、SCM50Pのオーバーホールから始まった一連の作業もここで一段落にしたいと思います。






# by tetsu_mod | 2019-03-16 23:19 | オーディオ | Comments(0)

ATC SCM50P(37)

MDFとシナベニアでネットワークボードを作っていきます。


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長かった加工もおしまいで、これで音がでます。
ここからは実測を元にmid/lowのアクティブクロスの調整と、highのホーン補正の調整です。






# by tetsu_mod | 2019-03-09 12:16 | オーディオ | Comments(2)

ATC SCM50P(36)

パーツが届きました。

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リッツ線コイル、どうなんでしょう。
楽しみです。

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コンデンサは、Mundorf M-CAP Evoと悩みましたが、
Clarity CAP CSAにしました。

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だって
メイドインブリテン
ですよ
(かっこよさだけで選んだとか言えない)

mid f0 dumping LCRのCは予算の都合でCross capにしました。


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どうせエンクロージャー内部に入るので見えなくなるのですが、
クロスオーバーボードを作っていきます。



# by tetsu_mod | 2019-03-08 10:56 | オーディオ | Comments(0)

0.
この稿は『Sound Reproduction』Floyd Tooleと、『SPEAKER DIRECTIVITY / OFF AXIS RESPONSE: THEORY AND MEASUREMENT TECHNIQUES』Acoustic Frontiers、自作スピーカーマスターブックなど先行の書籍・webから多くの抜粋をしています。

実際に、オーディオ(もしくはホームシアターサウンドシステム)の音質を決めている最重要因子はスピーカーと部屋の2つです。さらにスピーカーに関してはリスナーが音色を判断する最も基本的かつ最大のポイントは軸上周波数特性であり、そこに議論の余地はないものとして稿を進めます。

6.
スピーカーの指向性、もしくは軸外周波数特性が広いほうがいいのか、狭いほうがいいのかは部屋環境・セッティング・趣向に大いに左右される部分です。

一般的なオーディオで用いられる点音源思想の設計のスピーカーでは、視聴距離が倍になるごとに6dBずつ音量が減少(-6dB/DD)しますので、直接音のレベル:残響音のレベルの比率は距離が離れるほど残響音が増加し明瞭度が低下します。
PAなどで用いられるスピーカーはこの問題に対応するために線音源思想(-3dB/DD)のものが近年増加していますし、オーディオ用でも一部メーカーにもラインアレイ型が見られます。

この問題に対しては、
・広い部屋ほど音源から離れても直接音の比率が大きい
・吸音の効いた部屋ほど音源から離れても直接音の比率が大きい
・指向性が狭いほど音源から離れても直接音の比率が大きい
ことが分かっています。

初期到達音と残響音は相互関係があり、初期到達音のエネルギーが高ければ残響感と空間を満たす音に浸ったような音の包まれた感じ(LEV)は減少して音の明瞭度は向上します。


7.
また、スピーカーの指向性、もしくは軸外周波数特性は空間表現にも大きく関わります(軸外周波数特性がスムーズであることは前提に)。
音場感(聴感上の広がり=ASW)に有効な物理的ファクターは
・聴取音圧レベル
・一次反射音の遅れ時間、到達角度
・IACC(両耳間相互相関度)
・残響時間
などが言われています。

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(図出典:Acoustics of small roomsより一部邦訳)

空間表現の知覚は、聴覚において1kHz〜8kHzの周波数に支配され、特に30-50msec以内の直接音+初期反射音は音像定位・音色・空間の広がりといった空間表現において重要であることが分かっています。

時間軸に沿って、この空間表現の知覚を分解していくと、
・直接音は定位(方向)と強い相関を持ちます。
主に頭囲のサイズによって変化しますが、約1500Hz以下では左右の耳への到達時間差から、約2500Hz以上では左右の耳への到達音圧差から音響定位を把握しています。左右の耳への到達時間差・音圧差が大きいほど両耳間相関度(IACC)が小さくなり、より外側の定位を知覚します。

・直接音から約1msec(第一波面の法則もしくは先行音効果)以内にレベルの大きな反射音が到達する場合、人間の知覚では直接音と分解できないため、直接音とは別方向に直接音と反射音による合成音像を知覚(ハース効果、スピーカー周囲に反射物があった際に定位がズレる現象や、バッフルデザインで定位が変化する現象)してしまいます。

・直接音から1msec以上、50msec以内の(30-80msec以内などの諸説あり)の初期反射音は直接音を補強することで音声の明瞭性を向上させるほかにも、定位や音色・空間の広がりにも関与します。


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ここでは分かりやすさのために、側方一次反射音だけ図示しています。横幅が広い場合には初期反射音のレベルと密度は小さくなり、到達角度はより広くなります。逆に横幅が狭い場合には初期反射音のレベルと密度は高くなり、到達角度もより狭くなります。実際にはこれは6面すべての反射面でおこるため、もっと複雑な様相を呈します。

この初期反射音のうち側方反射音の到達角度は空間印象(音源のみかけの広がり:ASW)に大きく関与し、到達角度が広いほど両耳間相関度(IACC)が小さくなり、ASWは大きくなる=広い空間印象を与えます。

特にこの初期反射音でも20msec以内の反射音は音色の変化を伴います。平滑な壁面が近い場合は特定のピッチが強調されます(”ギラギラした””鋭い”など)。スケールの小さいランダムな凹凸を設けることで解消されますが、おそらくほとんどのルームアコースティック用のオーディオアクセサリーはこの効果でしょう。

50msec以上の残響音では全体として方向性を持たない拡散音の反射音群となり、しだいに直接音とは別に空間の残響として、空間を満たす音に浸ったような音の包まれた感じ(LEV)として知覚されます。


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また、壁・床などの距離およびスピーカーセッティング・視聴位置・周波数によってはコムフィルタによる変化を伴いますが、ここでは割愛します。

Ged Lee 氏たちは同社のHPにおいて、良好な定位が望まれる場合、この周波数に置ける振動収束、バッフル回折、および壁反射から約10msec以内で比較的クリーンでなければならないと結論づけています。
そのため、small audio roomでは
・1kHz以上ではwaveguideによる指向性制御が有用であり、
・スピーカーはバッフルデザインによるディフラクションや、振動板のbreak upに留意する必要があると結論づけています。

この主張は、Linkwitz氏やRichard's Stuffの主張するセッティング理論よりは合理的に思えます。


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(http://rtaylor.sites.tru.ca/2013/05/08/loudspeaker-placement-in-small-rooms/)
5*4mの部屋を以ってしても、すべての壁面からの一次反射波が6msec遅れて到達するスピーカー・視聴位置セッティングはこの僅かなエリアしかありません。日本の環境ではすでにsmall roomとは言い難い部屋ですね。また、彼らの主張では無指向性(全指向性)スピーカーを出発点にしているので、現実的に多くのスピーカーでの指向性を持つ高域と、モードによる支配が強い低域(反射音の知覚に関して、低域では無視できる)ではそぐわない理論になる可能性があります。とはいえ、広大な部屋であれば、無指向性(全指向性)スピーカーでフラットなSound Power / DIが得られる利点が強くでる可能性があるものと思われます。


ところで日本の6畳で反射波が10msecも取れません。
6畳でのインパルスデータです。

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これをもとに5-50-500msecでのフーリエ変換にかけます。

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(5msec FFT)

5msecの時点で、主に床からの反射音によるコムフィルタ(320Hzのdip)が出現しています。

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(50msec FFT)

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(500msec FFT)
古いデータですので、詳細な検討は困難ですが、6畳間でのクリーンな初期反射音=空間表現はかなりの工夫が必要そうです。

しかし日本では床・天井は大きな部屋でもほぼ同じ位置関係なので、空間表現に対してできることは部屋広さや吸音率、ハース効果を引き起こさないスピーカー周囲のセッティング、初期反射(特に側方壁・リスナー背後壁)の処理、そしてリスナーの好みに合わせたスピーカーの中域以上の指向性制御が重要だと思われます。



7.
Waveguideを装着したスピーカーをDIYしていくなかで、指向性を狭めたにも関わらず音像・音場といった空間表現がよりよくなる体験を個人的に何回かしましたので今回少し勉強してみました。
直接音と残響音のレベル比、および空間表現の観点から、『部屋に合わせたスピーカー設計』とは、【部屋容積・視聴距離・セッティングに合わせた指向性と、部屋・セッティングによるルームゲインに合わせた低域再生限界】になるかと思います。不備や間違えている部分もあるかもしれませんが、いずれにしろ軸外特性は随分と奥深い効果を持っていたようです。
(この章終了)




# by tetsu_mod | 2019-02-24 23:21 | オーディオ | Comments(2)

5,
スピーカーの軸外特性に着目するということは、直接音・初期到達音・残響音のバランスに着目していくことを意味しますから、初期到達音・残響音については室内の音響特性(音響工学)を識る必要があります。

が、これをまとめるのはいささか自分の手に余ります。
多くの音響工学の文献はコンサートホールをターゲットとしており、一部のオーディオルームもコンサートホールを意識した設計・工法を選んでいるものがありますが、コンサートホールとオーディオルームでは部屋容積の違いなどから挙動が異なり、一概にその知識を応用しがたいところです。


そこで調べたところ、オーディオルームではなくスタジオ設計についてですが、国内でもトップクラスの実績をもつ音響建築のSONA社からとても分かりやすく(平たく言うのなら、我々"初心者向け"に)まとめていただいている資料が公開されていました。


日本語でこれほど分かりやすく書いてくれている文章は他に何個も心当たりがありません。
必読です。

# by tetsu_mod | 2019-02-23 21:27 | オーディオ | Comments(0)

0.
この稿は『Sound Reproduction』Floyd Tooleと、『SPEAKER DIRECTIVITY / OFF AXIS RESPONSE: THEORY AND MEASUREMENT TECHNIQUES』Acoustic Frontiers、自作スピーカーマスターブックなど先行の書籍・webから多くの抜粋をしています。

実際に、オーディオ(もしくはホームシアターサウンドシステム)の音質を決めている最重要因子はスピーカーと部屋の2つです。さらにスピーカーに関してはリスナーが音色を判断する最も基本的かつ最大のポイントは軸上周波数特性であり、そこに議論の余地はないものとして稿を進めます。

4.
指向性、もしくは軸外特性について、“よく制御されたスムーズな”特性を得るためには、ユニットの指向性をもとに複数の設計法が検討されます。
本稿ではその幾つかを紹介し、またユニット間位相差の原因の一つであるAcoustic offsetについても合わせて記述したいと思います。
関連した内容は2017年に2本書かせてもらっていますね。
測定はツィーター軸上1mであるべきなのか(https://naseba.exblog.jp/24272447/)
waveguideと指向性(https://naseba.exblog.jp/24945620/)

一つは、理想的にはka=1を超えない、もしくはka=2程度までの間でユニットをクロスオーバーさせることで、広指向性を目指す方法です。
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例えばVivid audio Giya G3では1”, 2”, 4.9”, 5.5”*2のユニット配置とし、クロスオーバー周波数を3.5kHz. 880Hz, 220Hzとしています。3.5kHzは2”ユニットではka=2に相当することから、クロス周波数でも広い指向性をたもった特性がみられます。

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(図出典:stereophile.com)

また、Vivid audio Giya G3ではAcoustic offset補正もスラントしたバッフルを採用することで対応しています。

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一方で、同じVivid audio Kayaはwaveguideを用いることによって、指向性をやや狭くコントロールし、さらにAcoustic offset補正も同時に行っています。

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同一メーカー・同一開発者でこれだけ狙いがはっきりしている2機種は面白く、この違いについて開発者のローレンス・ディッキーは「広い音場を持つGIYAに対して、Kayaは“集中的な音場”を形成するスピーカーといえます。だからこそ、聴く音楽によってはKayaシリーズは理想的な再生を行えると言えます。具体的には、まずスピーカーから放射される音を壁の反射から遠ざけることができるということ。もうひとつは、スピーカーの前方、つまりリスニングポジションにおいてより音の世界に引き込まれやすくなるということです(phileweb.com)」と述べています。


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(http://www.hifidiy.net/index.php?s=/Home/Article/detail/id/17669.html)


重要なことは、マルチウェイスピーカーの設計において最も基本的かつ最大のポイントである軸上周波数特性に加えて、スムーズな指向性、もしくは軸外周波数応答を得るためには、ユニット間の指向性だけでなくAcoustic offsetを揃えることで軸外においてもユニット間の位相差の整合を両立する必要性があります。


ユニット間の位相差解消目的にAcoustic offsetを揃えるバッフルデザインとしては下記の3つが考えられます。

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このようなAcoustic offsetの調整においては、OmniMicではwavelet測定にて可視化しており、直感的に把握しやすくなっています。
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(図出典:ケンのオーディオメモ)


Reverse nullではクロス周波数での位相差情報ですが、waveletでは全周波数でのピークの分散から全体像がより把握しやすいものと思われます。

一方で、Acoustic offsetにたいしてディレイによる補正もよく行われます。

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確かにAcousitc Axis上の任意の1点においては位相差整合が取れます。

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しかしユニット間のAcoustic offsetは視聴角度・視聴距離に依存的に変化するため、任意の1点で合わせた位相差整合も、軸外においてもユニット間の位相差を揃えることを意味するわけではありません。

可能な限り物理的にAcoustic offset合わせることが望ましく、また鉛直方向も考慮するとやはり理想的には同軸スピーカーが望ましいことになります(しかし同軸スピーカーはまた特有の問題があるのでここでは割愛)。

(続く?)



# by tetsu_mod | 2019-02-16 20:01 | オーディオ | Comments(0)