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Measuring Loudspeakers, Part Three(4)

Measuring Loudspeakers, Part Three
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/103/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ和訳したいと思います。

・指向性/軸外周波数特性
空間のある点での無響応答を調べることは重要な情報ですが、スピーカーは全方向に球面状に音を放射することを忘れてはいけません。そこで、Stereophile.comではDRA Labsシステムの、軸外への角度を3つめの変数としてFFTデータをプロットする機能を使用して、垂直および水平の2つの平面でスピーカー軸外周波数応答がどのように変化するかを調べていきます。イタリアのOutline社製のステップモーター式ターンテーブル(Old Colony Sound Labから入手可能です)にスピーカーを載せ、5度刻みで回転させながら、それぞれの角度でインパルス応答を計測してきます。実際の測定にあたっては、スピーカーの音響中心(Acoustic Center)はスピーカーの重心とはほとんど一致しないため(図39)、ターンテーブルにスピーカーを設置するには、音響中心と重心とのバランスを取る必要があります。よって、角度が大きくなるほど測定誤差も増えてしまします。


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図39 ARTA – Application note No 6: Directivity Measurementsから
音響中心(Acoustic Center)と重心(回転軸)がずれると、右図のように軸外になるほど測定距離からの誤差が増えていきます。

無指向性スピーカーを除いて、測定範囲は左右±90度、上下±45度までとしています。普通の前方音響放射タイプのスピーカーでは、背側への回析はサイズからおおよそ予測できますが、低域では基本的にすべてのスピーカーで無指向性となっています。


図40は、180〜200mm(8inch)ウーファーと25mm(1inch)ドームツィーターを使った典型的な2wayスピーカーの前方水平面での指向性です。トゥイーター軸。 マイクの距離は50インチ(軸外角度が極端に大きくなると、少しこれより遠くなります)で、ツィーター軸上(0度)を正規化する(各角度の周波数特性から軸上周波数特性の凹凸を差し引く)ことで、軸外角度の影響だけが分かりやすくなるようにしています。


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図40 ツイーター軸上周波数応答で正規化した、一般的な2ウェイスピーカーの±90度の水平面指向特性

300Hz以下では波長がスピーカーサイズより十分に大きくなるためにほぼ無指向性に近づいていきます。一方で、2-3kHzの付近で軸外周波数応答が大きく落ち込んでおり、これは200mm(8inch)ウーファーにとってはクロスオーバー設計周波数が高すぎることを意味しています。波長が振動板サイズに近似する(波長が短くなる=高域になる)に従い、放射される音は単一指向性に近づいていきます(ビーミング)。3kHzから10kHzでは波長がツィーター振動板よりも十分に長いため広い指向性を示しますが、10kHz以上では波長がツィーター振動板サイズに近似し、指向性は狭くなっていきます。

クロスオーバー領域における指向性の乱れが、どのように聴こえるのかを予想するのは困難です。スピーカーの軸上周波数応答がフラットであれば、よほど部屋がカーテンやカーペットで吸音されていない限り、図40のスピーカーはおそらく明るめの音に聴こえます。室内では、パワー応答(Sound Power、後述)として2-3kHzと比較して中高域では音響エネルギーがより多く放射されているからです。ただし、実際にはこのグラフのスピーカーは軸上の応答で3kHzにわずかなピークがあります(図31)。室内でのスピーカーの聴感は軸上(=直接音)と軸外(=間接音)の両方の周波数応答の双方から影響をうけるため(後述)、3kHzの軸上周波数応答のピークは、2-3kHzの軸外周波数応答のディップである程度は補正されることになります。スピーカー設計者の微調整の多くは、一般に「ボイシング」と呼ばれますが、軸上と軸外の周波数応答のバランスを取り、全体的にフラットな室内応答を実現すること、と考えています。

図41は、図40とはかなり異なる水平面指向特性を示しています。このスピーカーは小型のウーファーを使用しているため、クロスオーバー領域での指向性が広くなっています。 ツィーター領域の下限付近に少しだけ軸外周波数応答の盛り上がりと、最高域付近の軸外周波数応答に、ツィーターのプラスチック製フェーズプレートによるものと思われる大きな盛り上がりが見られます。それ以外の帯域では、全体的な指向性はとても安定しており、周波数が高くなるにつれて次第に滑らかに指向性が狭くなるように設計されています。このような軸外周波数応答を持つスピーカーが、軸上周波数応答もフラット(可聴帯域で共振による色付けがない)場合、一般的な部屋ではとてもニュートラルでバランスのとれた音になります。逆にそのようなスピーカーが強い個性を持っていれば、驚いてしまうでしょう。部屋の壁からの音の反射は、高音域が減衰していることを除けば、軸上特性とそれほど変わらないからです(軸外周波数特性との誤植の可能性あり)。左右のスピーカーが等しく、マッチドペアであった場合、軸上・軸外周波数応答がよく制御されたスピーカーではステレオイメージは必ず素晴らしいものになります。これまでに測定したスピーカーのうち、このような特性をもつもので良好なステレオイメージが得られなかったものはありません。


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図41 ツイーター軸上周波数応答で正規化した、良好なステレオイメージをもつ2ウェイスピーカーの±90度の水平面指向特性

ほとんどすべてのスピーカーの設計ではユニットは垂直に並んでいるため、垂直周波数応答はクロスオーバー設計に強い影響をうけます。図42はツィーター軸上周波数応答で正規化した小型2wayスピーカーの垂直面指向特性です。軸外ではクロスオーバー周波数領域で凹みがみられエネルギー不足になっています。この設計では、中抜けにならないようにするに高めスタンドを使用する必要があります。


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図42 ツイーター軸上周波数応答で正規化した、良好なステレオイメージをもつ2ウェイスピーカーの±45度の垂直面指向特性

※軸上と軸外がそれぞれの凹凸をある程度は補正するとしても、どちらも最初からフラットもしくはスムースな特性を達成するほうが合理的だと言わざるを得ませんね。また、別稿でも詳述しましたが、軸外特性は空間表現(ステレオイメージ)に強い支配力を持っていることがわかっています。
※また、垂直指向特性から高めのスタンドを〜の意図はいまひとつはっきり分かりませんでした。
※いずれにしろ、Stereophile.comで採用されているツイーター軸上周波数応答で正規化する手法は、軸上周波数特性がフラットになってきている現代においてはデメリットがメリットを上回る可能性があるものと思われます。


by tetsu_mod | 2019-11-06 01:07 | オーディオ | Comments(0)