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Measuring Loudspeakers, Part One(3)

Measuring Loudspeakers, Part One
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/99/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ和訳したいと思います。

・能率(電圧感度)
スピーカーの能率は、その効率とよく混同されているようですが、能率とはスピーカーがどれだけの電力で駆動された場合にどれだけの音響出力が得られるかで厳密に定義されています。例えば、効率の計算としてはスピーカーにアンプから100W給電した場合、音響出力は何W得られるでしょうか? 答えは「そう多くはない」です。典型的なムービングコイルスピーカーの効率は約1%です。
効率、またはより正確には能率は、通常は1W入力に対してスピーカーから特定の距離(普通は1m)で得られる音圧レベルで表示されます(dB / W / m)。 ただし、入力W数はスピーカーのインピーダンスと周波数に依存し変動するため、実際にはこの表記法は困難が付きまといます。例えば、 2.83Vの電圧の正弦波でも、1kHzで8オームのインピーダンスのスピーカーに給電すると1Wの入力になります (オームの法則により、電力= V x V / R =(2.83 x 2.83)/ 8 = 1W)。しかし、ほとんどの場合スピーカーのインピーダンスは200Hzではるかに低く(ときには2オームなど)、この場合では200Hzで同じく2.83Vをスピーカーに入力すると、アンプは4倍の電力を消費します。このスピーカーの能率は、1kHzと200Hz で4倍違うということになります。

そもそもなぜ能率が重要なのでしょう?戦前のオーディオエンジニアは(電気通信エンジニアは今でも)電力の変換効率に精力を注いできました。しかし、半導体デバイスの出現以降、オーディオアンプは多かれ少なかれ定電圧アンプとして(つまり負荷や電流に関係なく一定の出力電圧を保つように)動作するようになりました。そこで、狭義の能率(W/dB/m)ではなく、アンプからの所定の電圧レベルでスピーカーがどれだけの音圧を出力するか(電圧感度)が現代では重要になっています。これは一般的に2.83V(8Ω負荷に対して1Wの入力)の入力電圧で1mの距離でスピーカーから出力される音圧レベル(dB/2.83V/m)と定義されます。

能率でなく電圧感度を使用する利点は、定電圧アンプであれば常に要求される電流を提供すると想定できるため、インピーダンス変動に関係なくスピーカーへの入力は2.83Vで一定に保たれることです。スピーカーのインピーダンスが変動せず8オームの純抵抗であれば、能率と電圧感度は等価となります。しかし、インピーダンスが8オームと大幅に異なる場合、前述の場合のように、能率と電圧感度は非常に違ってきます。
この能率と電圧感度の違いの典型例は静電スピーカーです。 低音のインピーダンスは100Ωを超えており、その電圧感度は非常に低く約79dB / 2.83V / mでした。 しかし、そのインピーダンスを考慮に入れると、典型的な8Ωのダイナミックスピーカーと比べて流れる電流は非常に少ないため、電力を音響出力に変換する能率はとても高いということになります。

アンプとスピーカーのマッチングにおいて、スピーカーの電圧感度は重要な項目です。 20Wアンプを使用している場合は電圧感度が高いスピーカーを使用するべきで、そうでなければ大音量再生はできません。逆に、電圧感度が高いスピーカー(たとえば100dB / 2.83V / m)を使用している場合、おそらく5Wのアンプで十分であって、600Wのアンプに10,000ドルを費やすことはお金の無駄です(実際にはアンプの性能は出力W数だけで定義されるわけではないので、後者はやや暴論のきらいがあるかと思います)。

ただ、電圧感度が重要な特性だと認識されていても、それをどう評価すべきかについては大きな意見の相違があるようです。問題は、ほとんどのスピーカーがフラットな周波数応答特性(f特)を持っていないことです。そのため、スピーカー会社のマーケティング部門にとって、フラットではない周波数応答特性のピークでの電圧感度でもって、そのスピーカーが高能率だと宣伝でするのは非常に魅力的です。また、測定に広帯域ノイズをテスト信号として使用した場合、ラウドスピーカーの再生帯域幅も測定感度に影響します。 2台のスピーカーが音楽では同じ音量で聞こえても、広帯域ノイズでは極端な超高域・超低域まで伸びているスピーカーはより高い電圧感度を持つと測定されます。 したがって、聴感上の音量(ラウドネス)と相関性をもつ電圧感度の測定法が必要になります。

1990年にフィリップス社のロナルドアーツは、聴感上の音量(ラウドネス)とスピーカーの周波数応答特性(f特性)の関係性についての研究を行いました。この報告では一般的な騒音測定に用いられる人の聴感特性を考慮した周波数重み付け特性Aでは聴感上の音量(ラウドネス)と十分な相関性は得られず、代わりに臨界帯域分析法(クリティカルバンド分析法、ISO932B)に基づいてPhonで聴感上の音量(ラウドネス)を計算すると結論付けていました(すみません、ISO932Bについては十分な情報が得られませんでした)。 クリティカルバンド分析器は簡単に手に入らないため、Stereophile.comではスピーカーに標準レベルで20kHz帯域幅のノイズを入力し、出力波形をDRA Labs MLSSAシステムのストレージオシロスコープモードで解析しています。帯域幅の違いの影響を軽減するため、1/10オクターブでスムージングをかけて周波数重み付け特性 B補正を行なっています。 Stereophile.comでは、この方法で評価された周波数重み付け特性 B補正での電圧感度に基づいて聴感上の音量(ラウドネス)が等しくなるように調整された30ペアの異なるスピーカーのシングルブラインドテストを4セット行いました。その結果、この方法で評価された周波数重み付け特性 B補正での電圧感度は、聴感上の音量(ラウドネス)はと十分な相関性を有していました。ただし、軸上で著しく周波数応答特性が乱れる(f特が凹凸な)スピーカーでは、それでもやや信頼性が低いことがわかりました。 ISO932Bを使用した測定・解析は、将来の課題となっています。

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図1. 10 Hz – 20 kHzでの周波数重み付け特性A-, B-, C- およびD-補正曲線(wikipedia)


一般的なスピーカーの電圧感度はどれぐらいでしょうか? 図2は1991年1月から1997年6月までの間にStereophil.comでレビューされた261台のスピーカーの計算された周波数重み付け特性 B補正での電圧感度をまとめたものです。測定された平均電圧感度は88dB(B)/2.83V/mで、中央値は85dB(B)です。 測定されたモデルのほぼ40%で、周波数重み付け特性 B補正での電圧感度が84.5dBから87.4dBの間に入ります。分布はおおよそ正規分布に思われますが、80dB(B)を下回るか、90dB(B)を上回るモデルもわずかに存在します。低電圧感度モデルはさまざまな種類の平面型スピーカーである傾向がありますが、95dB(B)以上の感度のスピーカーはすべてプロ用モニタースピーカーです(もしくは興味本位で測定された楽器用のスピーカー、おそらくはギター用スピーカー)。


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図2. 周波数重み付け特性 B補正した261台のスピーカーの電圧感度分布

電圧感度の分布が比較的狭い範囲(多くのスピーカーで電圧感度がほぼ一定範囲内=80dB前半〜90dB前半(B)/2.83V/m)なのは驚くべきことではありません。 高感度を達成するには、常に無謀で高価格な設計が必要になります。すべてのスピーカーの設計者は予算の制約を受けており、マグネットサイズ、ボイスコイルの設計、振動板面積などで結局は同様の妥協案に落ち着く傾向があります。

概ね、ここで測定した電圧感度はスピーカーのメーカーが公開値と比べてわずかに低めです。 ほとんどの場合、これは公開値が楽観的だからだと思われます。しかし、 Stereophile.comのオフィスは、ニューメキシコ州サンタフェの標高2150mにあることに注意する必要があります。 サンタフェと海抜0m地点で同じスピーカーのサンプルを測定した実験では、高度によるスピーカーの性能への影響は電圧感度の低下のみであることが示されました。 したがって、Stereophile.comで測定された電圧感度を絶対値として扱うのではなく、各スピーカーの電圧感度を、サンタフェと海抜0mの両方で測定したリファレンススピーカー(BBC LS3 / 5A)の電圧感度と比較する必要があります。つまり、測定システムエラーが測定値に反映されている可能性がありますが、とはいえその誤差が±1dBを超えないものと思われます。


by tetsu_mod | 2019-08-12 00:15 | オーディオ | Comments(0)