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Measuring Loudspeakers, Part One(1)

Measuring Loudspeakers, Part One
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/99/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ、何回かに分けて和訳したいと思います。素人の和訳ですので、正確な文章が読みたい方は、ぜひ原文に目を通してみてください。

この一連の記事は、最初は(わずかに異なる内容で)1997年9月にニューヨークで開催された第103回Audio Engineering Society Convention(AES学会)で発表された論文として書かれました。 同内容はAESホームページから年会費を払って加入することで購読することができます。

オーナーは音楽を聴くだけなのに、わざわざオーディオコンポーネントの特性を測定する意味はなんでしょうか? 英語で出版されているオーディオ雑誌のうち、厳密なスピーカー測定を定期的に発行している雑誌は3つだけです(1998年当時)、すなわちイギリスの『Hi-Fi News & Record Review』、アメリカの『Audio and Stereophile』、そして『Stereophile』です(2019年現在日本には1刊もなく、Stereo Sound No.155, 156(2005)の企画で測定データが出されたのが近年では最後ではないでしょうか)。この事実から、スピーカーの測定データを、レビュアーの主観的な印象の参考とすることは、近年では時代遅れとなっているようです。しかしながら、スピーカーの特性を測定することなく、”Golden Ears”をもつレビュアーがミスを犯してしまうことを避けるにはどうしたらいいでしょう?私 - John Atkinson氏 - は、オーディオコンポーネントのパフォーマンスを完全に説明することは、オーディオ雑誌の責任だと思います。 そして、それは測定なしにはできません。

DACやアンプといったエレクトリックコンポーネントについては、入力信号に対するその機材による色付けを測定するのは簡単です(しかし、その測定結果を音質と結びつけて評論するのは気の弱い人には難しいでしょうが…)。しかし、何十年もの間、スピーカーの特性を測定する手段は、広く・高価な無響室でサイン波スイープを測定することしかできませんでした。それが、比較的最近(1990年代になって)、PCを使うことで普通の部屋でローコストに測定を行う手段(擬似無響室測定+近接測定の合成)が出現し、多くの人がスピーカーの特性を測定することができるようになりました。とはいえ、やはりまだマイクをスピーカーの前に設置し、検査者がPCの前に座ってEnterキーを押すだけでは、実際の音質に近い測定を行うのは不可能です。

オーディオマニアやオーディオ雑誌のレビューで、スピーカーの性能を表すのによく使われる用語は以下の通りです。

・音楽的、および音響工学的な正確性: 生演奏を体験するリスナーを納得させるように、全体の音をどれだけより近似に再現できますか?

・周波数レンジ(f特性): 低音および高音の伸び。超低域・超高域まで完全にカバーしていますか?また、スピーカー設計者は中域の明確さや耐入力のために超低域を切り捨てていませんか?

・周波数バランス: 自然なバランスか?不自然な音色になっていませんか?ある人の声を録音して再生した場合に、ちゃんとその人の声に聞こえるのか、あるいは風呂場で聞くように聞こえたり、コウモリの金切り声のようになったりしていませんか?最低域や最高域が持ち上がったりしていませんか?特定の帯域でピークを持っていませんか??

・応答性およびバランスの異常: 音色の色付け。人の声がメガホンで話しているように聞こえたり、鼻をつまんでいるように聞こえたりしますか?女性ボーカルの子音が過度であったり、男性ボーカルが過度に重々しく聞こえたりしますか?類似した異なる楽器の音がちゃんと聞き分けられますか?バイオリンがビオラに聞こえたり、オーボエがイングリッシュホルンに聞こえたり、フェンダー・ストラトキャスターがギブソン・レスポールに聞こえたりしていませんか?古くなったエンクロージャーでは、本当に録音された楽器の音とともに木琴の音が鳴っているように聴こえることもあります。

・明瞭度と透明度: どれだけディティールを聴き取ることができますか? 80年代初頭に、無響室で多数の鍵束の音をライブ録音・再生し、2つのスピーカーをブラインドテストしたことがあります。1つのスピーカーでは、まるで鍵が1本だけのように聞こえました。もう一方のスピーカーでは、何本の鍵があるかほとんど聞き分けることができました。つまり、音場内の個々の音像はちゃんと分離して、もしくは音の海からはっきりと浮かび上がって聴こえますか?

・粒立ち、硬質感、歪み: 大音量でスピーカーの再生音は歪んでいませんか?リスナーが部屋から逃げ出したくなるような音ではないですか?リスナーが鼓膜をサンドペーパーで擦られているような不快感は感じていませんか?

・正確な音場: 両チャンネルからモノラル録音を再生した場合に、引き締まった音像が左右のスピーカーの中央に正確に定位しますか?それとも、もやもやとした塊として聴こえますか?また、特定の周波数では中央に定位しても、他の周波数では定位が崩れることはありませんか?

・音場の広がりと奥行き: 優秀録音盤では、スピーカーとリスナーの位置による2次元音場において、各楽器の正確な配置を聴き分けることができます。

・ダイナミックレンジ(マイクロおよびマクロ): フォルティッシモなパートでは、ピアニッシモなパートと比較して適切な大音量レンジが確保されていますか(マクロダイナミックレンジ)?また、フォルティッシモなパートの中でも小音量で奏でられる各楽器の微細な変化を大音量に埋もれることなく聴き取ることができますか(マイクロダイナミックレンジ)?大音量での再生で、ただ全てが歪んでしまっていませんか、それとも音楽を「生き生き」と再生するための大音量再生になっていますか?

・ペース、あるいはリズム: Stereophile.comの貢献者であり、英国の評論家であるMartin Colloms によって最初に定義されました。録音の再生時間や音楽のテンポにスピーカーが影響するわけはないはずなのですが、スピーカーの一部には、音楽を明らかにゆっくりと聞こえるように鳴らすものもあれば、明らかに速く聞こえるようにするものもあります。


by tetsu_mod | 2019-08-09 03:10 | オーディオ