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クロスオーバー-76 エピローグ(3)

反省編、その2です。
書ききれなかった3.インピーダンス、4.電気位相回転について。

3.インピーダンス
 クロスオーバーの設計は、本当は今年の春ぐらいまでかけてゆっくりするつもりでしたが、横浜ベイサイドショップがジェンセンの取り扱いを終わる&ウィンターセールということで、後半はかなり大急ぎで作りました。

その結果、今回のクロスオーバー設計では、最低インピーダンスは9kHzで2.21Ωになってしまいました。
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3rd orderやシリーズクロスオーバーなどを用いれば、もっとインピーダンスの高い回路が組めたかもしれません。しかし、私では設計しやすいシリーズクロスオーバーでしか、目標とした周波数特性・ユニット位相差を組めませんでした。腕が足りませんね。

ちなみにStereophileの記事によると、興味深い事に最低インピーダンス周波数には国籍があるそうで、イギリス製は大体10kHz前後、アメリカ製では中低域程度だそうです。どうもイギリス製のほうがクロスオーバーに凝っており、アメリカ製はウーファーユニット数が多いのではないかと思っていますが...



4.電気位相回転(インピーダンス位相角)
こちらもStereophileの記事からですが、インピーダンス変動の位相角に応じて電流は電圧に先んじたり遅れたりするが、最悪の場合(位相角が±90°)、電圧がゼロにも関わらず最大電流となります。このようなインピーダンス変動とはアンプ出力段の負荷になり、予想の出力の120%から270%になるそうです。

今回の私の作製例(上の写真、左上のインピーダンスカーブの点線がインピーダンス位相角です)でも、ウーファーf0以外でクロス周波数付近でインピーダンス位相角が-70〜+40°程度とかなり動いています。

このような位相角の変動が出力の大きな(もしくは大きな電源設計の)アンプが必要になる理由の一つと考えられています。つまり、公称8Ωのスピーカーでも8Ωの純抵抗のように扱えるわけではなく、また能率120dB/w/1mだったとしても、1w出力で十分に120dBの音楽信号を再生できるわけではありません。ここにはさらにダンピングファクターも関わってきますね。


そこで、ディナウディオやティールはこの問題に対する一つの回答として、スピーカー全体のインピーダンス変動補正回路を入れています。これはディナウディオFocus110のクロスオーバー回路図です。
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ウーファー・ツィーターともに1次回路(0.9mH,6.8mF)ですが、どちらもインピーダンス上昇補正回路(16mF+4.7Ω, 6.8Ω+1.5mF)があり、さらにツィーターには位相差補正のためにラダーディレイ回路(0.56mH*2,15mF*2)が入っていますが、さらにクロス周波数付近でスピーカー全体のインピーダンス上昇を補正する回路(6.8Ω+32mF+0.13mH)が特徴です。

別の解決策としてはバイアンプですが、せっかくユニット間の位相差を揃えた設計をしたのに、まったく違うアンプでバイアンプした場合は保証の限りではないと思われます。全く同一のアンプなら別だとは思いますが、個体差まではどうなんでしょう... 同様に、アクティブクロスオーバーでマルチアンプ駆動の場合は、アンプ+スピーカーでの位相差を調製すべきでしょう。
それを嫌ってバイワイヤで済ますことも考えられますが、バイワイヤにあまり意味があるとは思えないんですよね..個人的には。 全体のインピーダンスまで考えたときには、シングルワイヤリングにしてしまうのも確かに一つの解答として納得できるものです。


そこで、このインピーダンス補償回路をシミュレーションしたのがこちら。
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周波数特性もreverse null(=ユニット位相差)も変化ないですが、インピーダンスは変動・位相角回転ともに補正されます。
黄/青:補正後、 黒:補正前
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位相角回転はWf f0以外では-30〜+30°程度に収まっています。
一方、最低インピーダンスはさらに2.11Ωまで下がってしまいますが...
180uH + 47uF + 5.1Ωだけですので、この補正回路はオプションとして今後、実験してみようと思っています。

ただ、Lab.Gruppen IPD1200との組み合わせでは、今のところは特に問題なく鳴っています。
技術的な反省編は以上になります。
やはり、うまく行ったという手応えより、ああしたかった、こうだったら良かったのに、という反省のほうが多いです。メーカーのスピーカー設計者の方々を尊敬せずにはいられませんね。
by tetsu_mod | 2015-01-21 00:34 | オーディオ