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NEUMANN KH420

3way パワードモニターの雄の1つ、NEUMANN KH420を聞く機会に恵まれました。

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贅沢にも、ATC SCM100ASL PROと並べて切り替え比較環境でした。
ATCも、現行の自社製ツィーターがのったver.です。

というわけでSCM100/KH420での相対的な試聴となりました。

ATC SCM100ASL PRO
・新型ツィーターになって音色のつながりはかなり良くなった
・空間表現が相対的に弱い
・vo.にリバーブがかかったかのような濃さ、厚みがある
・独特のミッドの質感と、ローのカッコ良さはいまだ一線の魅力。

NEUMANN KH420
・空間の出方、vo.の小ささ、リバーブの見え方など、中高域の設計ではSCM100や1037より頭1つ抜けてる
・ATCがクセだらけに感じる
・ローエンドに詰まったような癖が少しだけある気がする。
・質感をつかみやすい一方で、そっけなさとも紙一重かも(ATCと比較したら、の話で)


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KH420はwaveguideデザインにとても注力しているので期待していましたが、空間表現能力は期待以上でした。
軸上・軸外特性の制御から、Genelec 8260/8351のような同軸ユニットを除いた、現代3wayモニターの設計では1つの指標になるべきスピーカーだと感じました。

貴重な体験をいただき、ありがとうございました。

# by tetsu_mod | 2019-11-17 00:13 | オーディオ | Comments(0)

・良い音のスピーカーとは?
Vance Dickasonはこの問題について議論を提起していましたが、最終的な結論はFloyd Tooleの1986年の包括的な論文だと思います。少なくとも、従来型の一般的なムービングコイル式の前方音響放射型スピーカーにおいて、Stereophile.comの8年間の仕事はこの論文を支持するものです。1991年に書きましたが私の意見としては、「最高の音色のスピーカーとは、中域から高域にかけてフラットな軸上周波数特性を持ち、共振による色付けがなく、高域の指向性がよくコントロールされ、優れたステレオイメージングをもち、最適に調整された低音、そして目障りなクリップを伴うことなく、クリーンに大音量を再生できるものです」。

・結論
スピーカーの各種性能を測定するたびに、音の挙動に関与するであろう重要な情報を得ることができます。しかしながら、測定された各種性能と主観的な音の評価との間を直接的に結びつけることはまだできていません。
つまりは、
1.主観的「音質評価」は、複数の測定結果と複雑に関連する
2.スピーカーの「音質」すべてを表すような単一の測定評価は存在しない
3.スピーカーの性能を測定すること自体が、主観的な選択を伴う二律背反
4.全ての測定結果は解釈次第で誤りを導くことがある
5.そして最も重要なことは、測定によってスピーカーがどのように動作するのかを知ることはできても、それが良い音かどうかを知る術はない、ということです。全ての測定結果を注意深く見れば、そのスピーカーの音をある程度正確に予想することは可能です。しかしそれでも、そのスピーカーがいいスピーカーか、素晴らしいスピーカーか、はたまた退屈な音のスピーカーなのかを知ることは不可能なのです。結局は音質を判断するのには、鍛えられた耳だけが唯一信頼できる手段なのです。

ある測定結果がどんなに良かろうとも、例えばベートーベンの第5交響曲の第3楽章の導入のトロンボーンが、例えばジミ・ヘンドリックスのElectric Ladylandでの「Voodoo Chile」のイントロでのトレモロがあなたの背筋を震えさせないのであれば、そのスピーカーは、どこかに何かやはり悪い部分があるのです。


※さて、長い間お付き合いいただきありがとうございました。この稿はここで終了です。

# by tetsu_mod | 2019-11-10 00:32 | オーディオ | Comments(0)

Measuring Loudspeakers, Part Three
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/103/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ和訳したいと思います。

・室内周波数特性
他のオーディオコンポーネントとは異なり、スピーカーはそのもの性能以外の要因が、聴感に影響します。これまで詳述したスピーカーの測定は、スピーカーそのものの性能です。しかし、スピーカーは無響室ではなく普通の部屋(残響室)で鳴らされるため、スピーカーそのものの性能と部屋の影響の相互作用はとても複雑なものです。しかし経験上、たとえ異なる部屋に設置して視聴したとしても、それぞれのスピーカーは一貫した固有の音色がするものです。その一方で、リスナーの聴感は、スピーカーの直接音(最初の到達音で、少なくとも中音域と高音域では擬似無響室周波数特性に近しいもの)と部屋の残響音(スピーカーの軸外周波数特性もしくは全方向への音響放射(パワー応答、Sound Power)に近しいもの)の両方から影響を受けることもわかっています。
そこで問題は、直接音と残響音が聴覚に影響するバランスはどれぐらいなのか、ということになります。何年もの間、 Consumer Reports誌のレビュアーは、パワー応答(スピーカーからの全方向への球面波としての音響放射の合計))が聴感のバランスを支配していると考えてきました。しかし、これはとても大きな部屋でリスナーがスピーカーからかなり遠くに離れて聞く場合にのみ成立する理論です。とはいえ、比較的近距離の視聴では、ツィーターとミッドが逆相接続されてしまっているスピーカー(クロスオーバー領域ではユニット間位相差が180度ずれた結果、無響室周波数応答で大きな凹み(reverse null)が生じます)、では聴感上でも中域にぽっかり抜けが感じられてしまいます。そして実際にいくつかのスピーカーにはそういうモデルがありました。このようなスピーカー設計の裏事情を調査したところ、設計者はとても大きな部屋で、少なくとも15フィート(約4.5m)は離れた場所で聴いていたようです。したがって、彼らの聴感上のスピーカーのバランスは、主に部屋を含めた音響放射(パワー応答、Sound Power)が支配的だったと思われます。

これまでに60台のスピーカーを用いて室内周波数特性の測定を、昔ながらの測定法とMLS測定法の2通りでしてきました。部屋は筆者個人のリスニングルームで、19×15.5×9.5フィート(5.7×4.65×2.85m)の直方体で、天井には9インチ(22.5cm)径の松材の丸太が梁として走っています。床はカーペットを敷き、天井は一次反射点にソネックス発泡材を貼り付けてあります。ステレオイメージングを損なう可能性のある背後からの初期反射を吸音および拡散する目的に、リスニングシートの背後の壁にはRPG Abffusorsを設置しています。さらに部屋の中低域の定常波の影響を軽減するために、部屋のすみにはASCチューブトラップを設置しています。結果として、部屋の残響時間は中低域から中高域までは約200msの比較的均一であり、10kHz以上では150msとなっています。

この室内周波数特性のスペクトル分析には、Audio Control Industrial SA-3050Aスペクトルアナライザと付属のマイクを用いました。左右のスピーカーのそれぞれで10箇所のマイク位置で6回測定し平均値を用いています。この10箇所の位置は、リスニングチェアの耳の位置(床から36インチ、スピーカーから9フィート)を中心に幅8インチ、高さ18インチの長方形のグリッド状に設定しました。部屋の共振モードの影響を減らすために、この左右合わせて120個の元データを平均化しています。こうして、リスナーが聞く音のバランスをおおよそ反映したイメージを得ることができると考えています。無響周波数応答を図31で示したスピーカーによる、典型的な室内周波数特性データが図43になります。この室内周波数特性測定は、実際の聴感上のバランスと良好な相関関係をもっていることが証明されています。


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図43. リスニングルームにおける一般的なスピーカーの室内音響特性(1/3オクターブ解析)


# by tetsu_mod | 2019-11-09 23:45 | オーディオ | Comments(0)

Measuring Loudspeakers, Part Three
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/103/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ和訳したいと思います。

・指向性/軸外周波数特性
空間のある点での無響応答を調べることは重要な情報ですが、スピーカーは全方向に球面状に音を放射することを忘れてはいけません。そこで、Stereophile.comではDRA Labsシステムの、軸外への角度を3つめの変数としてFFTデータをプロットする機能を使用して、垂直および水平の2つの平面でスピーカー軸外周波数応答がどのように変化するかを調べていきます。イタリアのOutline社製のステップモーター式ターンテーブル(Old Colony Sound Labから入手可能です)にスピーカーを載せ、5度刻みで回転させながら、それぞれの角度でインパルス応答を計測してきます。実際の測定にあたっては、スピーカーの音響中心(Acoustic Center)はスピーカーの重心とはほとんど一致しないため(図39)、ターンテーブルにスピーカーを設置するには、音響中心と重心とのバランスを取る必要があります。よって、角度が大きくなるほど測定誤差も増えてしまします。


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図39 ARTA – Application note No 6: Directivity Measurementsから
音響中心(Acoustic Center)と重心(回転軸)がずれると、右図のように軸外になるほど測定距離からの誤差が増えていきます。

無指向性スピーカーを除いて、測定範囲は左右±90度、上下±45度までとしています。普通の前方音響放射タイプのスピーカーでは、背側への回析はサイズからおおよそ予測できますが、低域では基本的にすべてのスピーカーで無指向性となっています。


図40は、180〜200mm(8inch)ウーファーと25mm(1inch)ドームツィーターを使った典型的な2wayスピーカーの前方水平面での指向性です。トゥイーター軸。 マイクの距離は50インチ(軸外角度が極端に大きくなると、少しこれより遠くなります)で、ツィーター軸上(0度)を正規化する(各角度の周波数特性から軸上周波数特性の凹凸を差し引く)ことで、軸外角度の影響だけが分かりやすくなるようにしています。


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図40 ツイーター軸上周波数応答で正規化した、一般的な2ウェイスピーカーの±90度の水平面指向特性

300Hz以下では波長がスピーカーサイズより十分に大きくなるためにほぼ無指向性に近づいていきます。一方で、2-3kHzの付近で軸外周波数応答が大きく落ち込んでおり、これは200mm(8inch)ウーファーにとってはクロスオーバー設計周波数が高すぎることを意味しています。波長が振動板サイズに近似する(波長が短くなる=高域になる)に従い、放射される音は単一指向性に近づいていきます(ビーミング)。3kHzから10kHzでは波長がツィーター振動板よりも十分に長いため広い指向性を示しますが、10kHz以上では波長がツィーター振動板サイズに近似し、指向性は狭くなっていきます。

クロスオーバー領域における指向性の乱れが、どのように聴こえるのかを予想するのは困難です。スピーカーの軸上周波数応答がフラットであれば、よほど部屋がカーテンやカーペットで吸音されていない限り、図40のスピーカーはおそらく明るめの音に聴こえます。室内では、パワー応答(Sound Power、後述)として2-3kHzと比較して中高域では音響エネルギーがより多く放射されているからです。ただし、実際にはこのグラフのスピーカーは軸上の応答で3kHzにわずかなピークがあります(図31)。室内でのスピーカーの聴感は軸上(=直接音)と軸外(=間接音)の両方の周波数応答の双方から影響をうけるため(後述)、3kHzの軸上周波数応答のピークは、2-3kHzの軸外周波数応答のディップである程度は補正されることになります。スピーカー設計者の微調整の多くは、一般に「ボイシング」と呼ばれますが、軸上と軸外の周波数応答のバランスを取り、全体的にフラットな室内応答を実現すること、と考えています。

図41は、図40とはかなり異なる水平面指向特性を示しています。このスピーカーは小型のウーファーを使用しているため、クロスオーバー領域での指向性が広くなっています。 ツィーター領域の下限付近に少しだけ軸外周波数応答の盛り上がりと、最高域付近の軸外周波数応答に、ツィーターのプラスチック製フェーズプレートによるものと思われる大きな盛り上がりが見られます。それ以外の帯域では、全体的な指向性はとても安定しており、周波数が高くなるにつれて次第に滑らかに指向性が狭くなるように設計されています。このような軸外周波数応答を持つスピーカーが、軸上周波数応答もフラット(可聴帯域で共振による色付けがない)場合、一般的な部屋ではとてもニュートラルでバランスのとれた音になります。逆にそのようなスピーカーが強い個性を持っていれば、驚いてしまうでしょう。部屋の壁からの音の反射は、高音域が減衰していることを除けば、軸上特性とそれほど変わらないからです(軸外周波数特性との誤植の可能性あり)。左右のスピーカーが等しく、マッチドペアであった場合、軸上・軸外周波数応答がよく制御されたスピーカーではステレオイメージは必ず素晴らしいものになります。これまでに測定したスピーカーのうち、このような特性をもつもので良好なステレオイメージが得られなかったものはありません。


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図41 ツイーター軸上周波数応答で正規化した、良好なステレオイメージをもつ2ウェイスピーカーの±90度の水平面指向特性

ほとんどすべてのスピーカーの設計ではユニットは垂直に並んでいるため、垂直周波数応答はクロスオーバー設計に強い影響をうけます。図42はツィーター軸上周波数応答で正規化した小型2wayスピーカーの垂直面指向特性です。軸外ではクロスオーバー周波数領域で凹みがみられエネルギー不足になっています。この設計では、中抜けにならないようにするに高めスタンドを使用する必要があります。


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図42 ツイーター軸上周波数応答で正規化した、良好なステレオイメージをもつ2ウェイスピーカーの±45度の垂直面指向特性

※軸上と軸外がそれぞれの凹凸をある程度は補正するとしても、どちらも最初からフラットもしくはスムースな特性を達成するほうが合理的だと言わざるを得ませんね。また、別稿でも詳述しましたが、軸外特性は空間表現(ステレオイメージ)に強い支配力を持っていることがわかっています。
※また、垂直指向特性から高めのスタンドを〜の意図はいまひとつはっきり分かりませんでした。
※いずれにしろ、Stereophile.comで採用されているツイーター軸上周波数応答で正規化する手法は、軸上周波数特性がフラットになってきている現代においてはデメリットがメリットを上回る可能性があるものと思われます。


# by tetsu_mod | 2019-11-06 01:07 | オーディオ | Comments(0)

Measuring Loudspeakers, Part Three
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/103/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ和訳したいと思います。

・近接応答(nera field)周波数測定
MLSをもちいた遠距離測定では、部屋による反射を除去するために、時間軸波形を切り落とすため、低周波領域ではほとんど役に立ちません(十分に広い無響室が必要になります)。しかし、Don Keeleは1974年の論文でマイクをダイアフラムの非常に近くに置くことで、スピーカーいて、スピーカーの周波数特性を近接応答(nera field)で測定する方法を述べています。最近になってB&KのStruckとTemmeは、この近接応答(nera field)周波数特性測定は、遠距離周波数特性測定によるものを正確に反映していることが確認されています。複数のウーファーを持つスピーカーの場合は、近接応答周波数特性をそれぞれに測定し、振動板直径の平方根の比率で足し合わせることで計算できます。その場合は足し合わせる音圧の計算には、各ユニットの音響位相と仮想リスニングポイントまでの距離の差異による位相シフトの両方の複合を考慮する必要があります。この近接応答周波数測定は、測定周波数の波長が振動板のサイズよりも十分に大きい場合にのみ有効です。しかし、この測定は300Hz以下での応答を対象としているので(300Hzで前述の擬似無響室周波数特性と合成するからです、後述)、スピーカーが非常に大きい場合を除いて問題にはなりません。すなわち、ここでもまたパネルスピーカーの測定に限っては問題になる、ということです。
図31は、近接場で測定された典型的なポート型または反射型の設計の例を示しています。 ウーファーとポートの個々の応答が、それらの複素数とともに表示されます。 ウーファーの出力は、ポートチューニングまたは反共振周波数で最小に低下します。 このグラフの解像度は1Hzです。 十分な解像度では、ポートの出力が最大になると、ダイアフラムに大きな背圧がかかり、ウーファーが動かないため、真のノッチが見られます。 この時点で、ほとんどすべてのスピーカーの出力はポートから来ています。 その周波数より下では、ウーファーとポートの両方が、2次、12dB /オクターブの傾斜でロールアウトします。 ただし、互いに位相がずれているため、合計応答は最終的な4次24dB /オクターブの勾配でロールアウトします。


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図38 典型的なバスレフ型スピーカーの近接応答周波数測定(低域のみ、左の山がバスレフポートの応答、30Hzにくびれを持つのがウーファーの応答、真ん中がウーファーとバスレフポートの応答の合成です。)

この近接応答周波数特性で測定されるスピーカーの低域での挙動が、室内音響に与える影響(room gainとの合成)は興味深いものがあります。1997年の半ばまで、私が測定した360台のスピーカーの大部分(300台、つまり83%)はバスレフ型で、設計者は無響室での低域再生限界を拡張するためにポート共振を利用してきました。しかし、実際のリスニングルームではバスレフ型では低域のロールオフが強く(-18dB/oct)、-12dB/octのロールオフをもつ同等の密閉型スピーカーよりも重低音での再生が悪くなる場合があります。ただし、バスレフ型では無響室低域再生限界を拡張するだけでなく、耐入力とダイナミックレンジも改善される利点もあります。同様に、いわゆる「トランスミッションライン型」からマルチポートやマルチドライバーの怪物に至るまで、個性的な低域設計となっている多くのスピーカーを測定した結果、ほぼすべての場合、密閉型とほぼ同等またはそれ以上の低音性能が得られると考えられます。

Stereophile.comで公開されるグラフは、スピーカーの近接応答周波数特性は300Hzで前述の擬似無響室周波数特性と合成されます。ただし、Keeleの論文で指摘されているように、近接応答周波数特性は、スピーカーユニットの2πもしくは半空間、すなわち部屋の壁に近い状態での動作を想定した特性です。そのため、見かけ上では無響室での測定結果よりも低域が持ち上がった測定グラフが合成されます。しかし、100Hz以下の波長を考えると、スピーカーのウーファーとポートは常に1つの反射面(床)からは数分の1の波長内にあり、また他の3つの境界(壁と天井)からもほとんどの場合で1波長未満であるということを考えると、とても大きな部屋を除いて、無響室測定よりも現実に即した低域周波数特性が得られていると考えます。実際に、無響室測定で低域が伸びているスピーカーを試聴すると、近接応答でも聴感上でもローブーストされているように聴こえます。
(注:個人的には聴感の部分においては、Stereophile.comの視聴室の残響特性などがなく、また市販スピーカーには変形バッフルの製品も多く、バッフルステップをきちんと補正できているのか記述がないことから、最終段落においては疑問が残る内容かと思います。)


# by tetsu_mod | 2019-11-02 23:21 | オーディオ | Comments(0)

Measuring Loudspeakers, Part Three
John Atkinson | Nov 7, 1998
https://www.stereophile.com/features/103/index.html

紹介するのはStereophile誌の前編集長、John Atkinson氏の1998年のスピーカーの特性評価における総説です。すでに21年前の総説ですが、非常にまとまっており、またこの内容に対する理解は非常に得難いものなので、僭越ながら注釈を追加しつつ和訳したいと思います。

・軸上周波数特性
スピーカーの軸上周波数特性にはどれほどの意味があるでしょうか?
Stereophile.comの創設者J. Gordon Holtは、10年以上前(1985年)に軸上でフラットなスピーカーは正しく聴こえないという寄稿をしました。すなわち、「過去数年間、一部のハイエンドスピーカーのフラットな周波数特性に感銘を受けてきました。しかし同時に、そのような測定上フラットなスピーカーのひどく攻撃的な音に辟易としていました。高域が持ち上がって聴こえてしまい、音楽を楽しむことはできなかった。」「中低音域がほぼフラットのスピーカーは、聴感上では中低域がなくなったような、ガッツがなく聴こえる傾向があり好みが分かれるようです… 私(J. Gordon Holt)のリスニングルームで、測定上フラットなスピーカーはローエンドが薄く聴こえ、逆に聴感上フラットなスピーカーは測定上ではローエンドが持ち上がっていた。」

しかし、別のStereophile.comのレビューアーであるMartin Collomsは、シングルブラインドリスニングテストの結果を引用し、「1/3オクターブ平均で測定したときに、100Hz〜10kHzで非常に均一な軸上周波数特性を持つスピーカーが好ましい」「設計目標として、エンジニアは軸上周波数特性で±0.25dB以下の偏差を目指すべきである、ただし細かな凹凸はこの限りではない」と異議を唱えました(1991年)。オーディオレビュアーのDon Keele はこれに加えて、「軸上の応答はスムーズでなければならない。なぜなら、リスナーに最初に到達する音のスペクトルバランスを定義するため、音色を判断する上で最も基本的かつ大事な要素だからだ」と述べています(1992年)。

1991年に行った74台のスピーカーの分析も、測定された軸上周波数特性のフラットさとリスナーの反応は明確な相関性を示しました。 FFT計算に伴う周波数特性の線型性を補正するために対数周波数に重み付けをした170Hzから17kHzの軸上周波数特性の標準偏差によってスピーカーをいくつかのグループにわけたところ、擬似無響室軸上周波数特性とリスナーのスピーカー評価には明確な相関性がみられました。この相関関係は、完全なブラインドリスニングテストでも同様の結果でした。

これらの結果から、Holtの主張する測定は室内測定(RTA: Real Time Analyzer)で行われたのではないかと疑われます。この場合、測定データにはスピーカーの擬似無響室軸上周波数特性と、パワーレスポンスの両方が含まれています(後述)。 吸音性の家具やカーテンは高域の周波数特性バランスは劇的に変化しますし、さらに一般的な前方に音響放射するスピーカーでは周波数が高くなるにつれパワーレスポンスは低下します(=高域ほど指向性が狭い)。つまり、室内測定(RTA)でフラットな周波数特性は、大抵の場合はもとの軸上周波数特性がハイ上がりであることを意味します。これは、小さい部屋よりも大きい部屋ではるかに重要です(後述)。

図31は、上記のMLS手法を使用してツィーター軸上で測定した高音質の評価を獲得したスピーカーの無響室(擬似無響室)軸上周波数特性です。ツィーター軸を中心とした水平30度の範囲で平均化し、マイクの周波数特性とアンチエイリアシングフィルター誤差を補正した結果です。グラフは実際には平均値であり、1kHzから30kHzの30kHzレンジで取られた7つの水平方向周波数特性の平均、312.5Hzから1kHzの5kHzレンジで取られた別の軸上測定(これによりグラフが見やすくなりますが、真の周波数分解能は変わりません)、および312.5Hz以下のニアフィールド(ポートとウーファーの複合和、位相応答を考慮し2つの振幅応答を加算します)です。 メタルドームツイーターのbreak-up周波数で大きな高Qのピークが見られますが、中域と高音域の応答はかなりフラットです。ほぼ全帯域にわたって±2dBの周波数特性偏差に収まります。

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図31 高音質スピーカーの典型的な周波数特性、50インチ・MLS測定。ツィーター軸上水平30度の平均と、低域の近接測定の複合による周波数特性。

この測定法では、300Hz〜1kHzの周波数分解能は低下しており、グラフのプロットの間隔は広くなることに注意が必要ですが、しかし十分に有用なデータです。1kHz弱に小さなディップがあります(おそらくはウーファーのエッジ共振でしょう)が、おそらく大きなデメリットにはならないでしょう。3kHzに小さなピークがあり、若干「噛み付くような」音がしたり、もしくは「攻撃的」というほどではないもののプレゼンスが強調され「鮮やかな」音がしたりする場合があります。一方で、この程度のピークがスピーカーのサウンドとして何らかの作用を及ぼすということは、そのスピーカーは聴感上で十分にフラットな特性だと言えるかもしれません(後述)。

対照的なのは図32のスピーカーで、Stereophile.comのブラインドリスニングテストの結果、楽器の音色は歪み、かなり脚色されていると評価されたものの測定結果です。このスピーカーでは中域はフラットで、低域も伸びています。しかし、中高音域ではひどいえぐれがあります。大きな部屋を除くすべての部屋で、これは特徴的な、中抜けしたような音色を生み出します。えぐれの上の周波数には中高域にピークがあり、聴感上で「ジャリジャリした」バランスとなるでしょう。ツィーターの平均レベルはウーファーのレベルよりも約5dB低いため、設計者はおそらく3.5kHzのピークのせいでどんな音楽も明るく聴こえることに悩まされ、ツィーターの音量のせいと考え、そのレベルを下げることでバランスを取ろうとしたのだと思います。しかし、本当の問題はウーファーコーンの共振モードまたはbreak-upモードによるピークと思われるため、その対策は無意味なことです(これは98年12月号の85ページのfig.19で説明しています)。

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図32 評価の良くないスピーカーの典型的な周波数特性、50インチ・MLS測定。ツィーター軸上水平30度の平均と、低域の近接測定の複合による周波数特性。

図33の棒グラフは、1991年以降に測定した320台のスピーカーの擬似無響応答測定値を表にまとめたものです。前述の通り、FFT計算に伴う周波数特性の線型性を補正するために対数周波数に重み付けをした170Hzから17kHzまでの2オクターブの周波数特性に周波数対数表示補正を行なって標準偏差によってグループ分けされています。フラットな特性からの平均的な標準偏差は3dBであり、1dB以内に収まっているスピーカーはごくわずかです。一方、5 dB以上の標準偏差を持つスピーカーもまたごくわずかです。全体的には、スピーカー設計者の努力は軸上周波数特性のフラットさにおいて概ね達成されつつあると言っていいでしょう。


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図33 320台のスピーカーにおける170Hz-17kHzでの周波数特性の標準偏差の分布


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表1: Stereophile.comによる推奨機材と周波数特性標準偏差

任意のスピーカーの周波数特性のフラットさと、Stereophile.comの音質評価の間には相関性があるのでしょうか?表1の生データを見ると、軸上周波数特性のフラットさと販売価格には相関性はないようですが、表1からは軸上周波数特性がフラットであるほど推奨機材と評価される可能性が高くなることが分かります。

ただし、中高域のフラットさは良いスピーカーの1つの要素ですが、それだけでは良いスピーカーだと言えるわけではありません。図33のフラットな周波数特性を持ったモデルでも、他の部分に問題と抱えており、結果として推奨モデルに選ばれなかったスピーカーもあります。一方、軸上周波数特性のフラットさが一定以上に損なわれると(たとえば、170Hz〜17kHzの周波数特性の標準偏差が約3.5dB以内)、スピーカーとして音質評価が良い評価をされたり、推奨モデルに選ばれたりする可能性はぐっと低くなります。 例外としては、a)そのスピーカーが非常に安価か、ピークディップが周波数スペクトルで比較的聴覚的に問題ない部分にある場合、またはb)全体的に滑らかに傾いた周波数特性のために標準偏差が大きい場合。またはc)スピーカーが他のほとんどすべての点で優れている場合。

また、基本的にスムーズでフラットな周波数特性を持っていても、ウーファーのbreak-upやエンクロージャーの共振により、特定の周波数に凹凸をもつスピーカーでは評価が下がるのは自明なことです。クロスオーバー、またはユニットの複合的な問題についても同様です。スピーカー全体に周波数特性がフラットであっても、高域の指向性が不足していれば、部屋の残響成分では生気の抜けたような音になってしまいます。また、スピーカーの中域がどれほどフラットであっても、ゆるくダンピングが効いていない低域は、多くのリスナーにとっては(強調された高域とうまくマッチでもしない限りは)ほとんど許されない問題です。 逆に言えば、スピーカー設計者がオーバーダンピングで軽い低音をもつスピーカーにおいてやってはいけない最悪の設計は、高域を強調することです。これは全体のバランスとひいては音楽を崩し、強調された高音によってシステムの他のアラまですべて強調してしまいます。

興味深いことに、スピーカーで低域・高域の両端でロールオフしている場合、周波数特性の標準偏差からの予想よりも許容できる音であることが多いです。この場合、中域以上の周波数特性がフラットでなくても、その高域の凹凸もかまぼこ型のバランスだと耳は判断してしまうのです。そして、反対に中高域のエネルギーが不足した場合には、音楽性に欠けるという判断になるようです。

図34は、標準偏差が1.375dB以下の20台のスピーカーの軸上周波数特性です。これらはすべて非常にフラットであることがわかります(この結果から、スピーカーを特徴付けるために対数周波数で重み付けされた標準偏差によるStereophile.comのスピーカー測定評価は正当性がありそうです)。 実際、最も周波数特性のフラットさが良かったスピーカーに至っては、B&K測定マイクのキャリブレーション誤差よりもフラットでした!対照的に、図35は、軸上周波数特性の偏差が最も大きいスピーカーの「ログギャラリー」です(この群にパネル型スピーカーは含まれていません。パネル型スピーカーは、前述の近接効果により、測定した周波数特性は傾斜するため、標準偏差が大きくなる傾向があります)。 これらでは周波数特性の大きなピーク・ディップや、または全体的にハイ上がり・下がりといった傾向がみられました。たとえば、Stereophile Guide to Home Theaterで測定したボーズの小型のサテライトスピーカーでは、300Hzから10kHzまで10dBずつ滑らかに周波数特性の傾斜が見られました。

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図34 標準偏差が最小の20台のスピーカーの周波数特性、50インチ・MLS測定。ツィーター軸上水平30度の平均と、低域の近接測定の複合による周波数特性。


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図35 標準偏差が最大の13台のスピーカーの周波数特性、50インチ・MLS測定。ツィーター軸上水平30度の平均と、低域の近接測定の複合による周波数特性。(パネルスピーカーを除く)



図36は同時期に誌面にのったパネル型スピーカーの周波数特性です。少しわかりにくいですが、50インチのマイク距離では、グラフから低い周波数から高い周波数に向かって周波数特性の音圧が下がる傾向が明らかにみて取れます。これは、前述のように、バッフルデザインの大きさゆえに、低周波数では近距離音場ですが、高周波数では遠距離音場として測定してしまうためです。

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図36 11台のパネル型スピーカーの周波数特性、50インチ・MLS測定。ツィーター軸上水平30度の平均と、低域の近接測定の複合による周波数特性。

この測定データには、7台のプロ用モニタースピーカーが含まれています。図37はプロ用モニタースピーカーの軸上周波数特性ですが、全体の平均よりもフラットさで劣るものがあるのは興味深い結果です。ただし、スタジオモニターには、はるかに高いダイナミックレンジなど、家庭用スピーカーとは別の要素が必要とされます。また、それにもかかわらず、最もフラットな特性の1つは、このプロ用モニタースピーカーグループに含まれるフィンランドのGenelecの小さなパワードスタジオモニターでした。

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図37 7台のスタジオモニタースピーカーの周波数特性、50インチ・MLS測定。ツィーター軸上水平30度の平均と、低域の近接測定の複合による周波数特性。

また、図33には、DSPを用いて軸上周波数をイコライジングしたスピーカーが5台あり、うち1台はデジタルクロスオーバーを搭載していました。この5台はすべて周波数特性標準偏差がもちろん小さいのですが、普通のパッシブネットワークを用いたモデルにもっと周波数特性標準偏差がもっと小さいものもたくさんあったということは驚くべきことでしょう。


# by tetsu_mod | 2019-10-24 20:42 | オーディオ | Comments(2)