5,
スピーカーの軸外特性に着目するということは、直接音・初期到達音・残響音のバランスに着目していくことを意味しますから、初期到達音・残響音については室内の音響特性(音響工学)を識る必要があります。

が、これをまとめるのはいささか自分の手に余ります。
多くの音響工学の文献はコンサートホールをターゲットとしており、一部のオーディオルームもコンサートホールを意識した設計・工法を選んでいるものがありますが、コンサートホールとオーディオルームでは部屋容積の違いなどから挙動が異なり、一概にその知識を応用しがたいところです。


そこで調べたところ、オーディオルームではなくスタジオ設計についてですが、国内でもトップクラスの実績をもつ音響建築のSONA社からとても分かりやすく(平たく言うのなら、我々"初心者向け"に)まとめていただいている資料が公開されていました。


日本語でこれほど分かりやすく書いてくれている文章は他に何個も心当たりがありません。
必読です。

# by tetsu_mod | 2019-02-23 21:27 | オーディオ | Comments(0)

0.
この稿は『Sound Reproduction』Floyd Tooleと、『SPEAKER DIRECTIVITY / OFF AXIS RESPONSE: THEORY AND MEASUREMENT TECHNIQUES』Acoustic Frontiers、自作スピーカーマスターブックなど先行の書籍・webから多くの抜粋をしています。

実際に、オーディオ(もしくはホームシアターサウンドシステム)の音質を決めている最重要因子はスピーカーと部屋の2つです。さらにスピーカーに関してはリスナーが音色を判断する最も基本的かつ最大のポイントは軸上周波数特性であり、そこに議論の余地はないものとして稿を進めます。

4.
指向性、もしくは軸外特性について、“よく制御されたスムーズな”特性を得るためには、ユニットの指向性をもとに複数の設計法が検討されます。
本稿ではその幾つかを紹介し、またユニット間位相差の原因の一つであるAcoustic offsetについても合わせて記述したいと思います。
関連した内容は2017年に2本書かせてもらっていますね。
測定はツィーター軸上1mであるべきなのか(https://naseba.exblog.jp/24272447/)
waveguideと指向性(https://naseba.exblog.jp/24945620/)

一つは、理想的にはka=1を超えない、もしくはka=2程度までの間でユニットをクロスオーバーさせることで、広指向性を目指す方法です。
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例えばVivid audio Giya G3では1”, 2”, 4.9”, 5.5”*2のユニット配置とし、クロスオーバー周波数を3.5kHz. 880Hz, 220Hzとしています。3.5kHzは2”ユニットではka=2に相当することから、クロス周波数でも広い指向性をたもった特性がみられます。

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(図出典:stereophile.com)

また、Vivid audio Giya G3ではAcoustic offset補正もスラントしたバッフルを採用することで対応しています。

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一方で、同じVivid audio Kayaはwaveguideを用いることによって、指向性をやや狭くコントロールし、さらにAcoustic offset補正も同時に行っています。

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同一メーカー・同一開発者でこれだけ狙いがはっきりしている2機種は面白く、この違いについて開発者のローレンス・ディッキーは「広い音場を持つGIYAに対して、Kayaは“集中的な音場”を形成するスピーカーといえます。だからこそ、聴く音楽によってはKayaシリーズは理想的な再生を行えると言えます。具体的には、まずスピーカーから放射される音を壁の反射から遠ざけることができるということ。もうひとつは、スピーカーの前方、つまりリスニングポジションにおいてより音の世界に引き込まれやすくなるということです(phileweb.com)」と述べています。


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(http://www.hifidiy.net/index.php?s=/Home/Article/detail/id/17669.html)


重要なことは、マルチウェイスピーカーの設計において最も基本的かつ最大のポイントは軸上周波数特性に加えて、スムーズな指向性、もしくは軸外周波数応答を得るためには、ユニット間の指向性を揃えることに加えて、Acoustic offsetを揃えることで軸外においてもユニット間の位相差を揃えることを両立する必要性があります。


ユニット間の位相差解消目的にAcoustic offsetを揃えるバッフルデザインとしては下記の3つが考えられます。

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このようなAcoustic offsetの調整においては、OmniMicではwavelet測定にて可視化しており、直感的に把握しやすくなっています。
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(図出典:ケンのオーディオメモ)


Reverse nullではクロス周波数での位相差情報ですが、waveletでは全周波数でのピークの分散から全体像がより把握しやすいものと思われます。

一方で、Acoustic offsetにたいしてディレイによる補正もよく行われます。

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確かにAcousitc Axis上の任意の1点においては位相差整合が取れます。

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しかしユニット間のAcoustic offsetは視聴角度・視聴距離に依存的に変化するため、任意の1点で合わせた位相差整合も、軸外においてもユニット間の位相差を揃えることを意味するわけではありません。

可能な限り物理的にAcoustic offset合わせることが望ましく、また鉛直方向も考慮するとやはり理想的には同軸スピーカーが望ましいことになります(しかし同軸スピーカーはまた特有の問題があるのでここでは割愛)。

(続く?)



# by tetsu_mod | 2019-02-16 20:01 | オーディオ | Comments(0)

0.
この稿は『Sound Reproduction』Floyd Tooleと、『SPEAKER DIRECTIVITY / OFF AXIS RESPONSE: THEORY AND MEASUREMENT TECHNIQUES』Acoustic Frontiers、自作スピーカーマスターブックなど先行の書籍・webから多くの抜粋をしています。

実際に、オーディオ(もしくはホームシアターサウンドシステム)の音質を決めている最重要因子はスピーカーと部屋の2つです。さらにスピーカーに関してはリスナーが音色を判断する最も基本的かつ最大のポイントは軸上周波数特性であり、そこに議論の余地はないものとして稿を進めます。

3.
指向性、もしくは軸外特性について、“よく制御されたスムーズな”特性を得るためにはその評価が必要です。実際には、音圧・指向性・周波数情報といった3要素を2D画面上で理解するためには何らかの工夫が必要になるため、その評価には複数の方法があります。

Anechoic vs windowed FFT measurements(無響室・擬似無響室FFT解析)
前提として任意の一点におけるスピーカーの周波数特性を評価する必要があります。スピーカーの周波数特性を完璧に評価する唯一の正確な方法は、広い無響室で正弦波を非常にゆっくりスイープさせることです。これらのコストとサイズは、一部のスピーカーメーカーを除いてほとんどの”普通の”人間は測定できないことを意味しています。
そこで、ほとんどの場合においては擬似無響室測定法を用いることになります。空間内のある点でのスピーカーの周波数応答を測定するために、マイクを適切な距離(マイクが測定する最低周波数の波長の数倍以上、バッフルの長辺の長さ以上など)に配置します。次に、インパルス応答を測定しコンピュータソフトウェアを使用して部屋の反射を排除した時間軸領域をフーリエ変換することで擬似的に無響室測定を行います。
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この擬似無響音質測定を複数ポイントでとっていくことでスピーカーからの3Dな音圧放射特性を得ることができます。


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(図出典:自作スピーカーと測定  * 冬うさぎの晴耕雨読な日々 *より)
このデータから得られた情報としての指向性、もしくは軸外特性の評価の仕方は複数ありますが、以下に紹介するどの方法もいずれも実際には等価のものを表示しているにすぎませんので、どの評価法がもっとも”良い”かはケースバイケースと言わざるを得ません。


3-1. Polar Plots
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0〜±90度もしくは0〜±180度の角度での、特定の周波数における音圧レベル(dB)を示しています。
例えばマイクの指向性や、ユニット直径に基づく指向性(ビーム)は、Polar Plotsで示されることがよくあります。


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図では、無次元数kaは円周を波長で割ったもの(周波数・ユニット直径係数)です。
例えば、15インチのピストンは約4フィートの円周を持っているので、 kaは約250Hzです。 ka=1を超えると、軸外特性は変化し始めます。比較的滑らかな軸外特性は、ka=2(15インチユニットでは500Hz)ではまだ維持されていますが、ka=5(15インチユニットでは1250Hz)より高い周波数では、顕著な指向性(ビーム)が発生します。この現象はユニット直径に依存するため、15インチのシングルドライバースピーカー(kaは約250Hz)は狭い指向性のスピーカーになりますが、2インチのシングルドライバースピーカー(kaは約1875Hz)は比較的広い指向性になります。つまりマルチウェイの構築において設計したクロス周波数が、ウーファーka=5 / ツィーターka<1などであればそのクロス周波数での軸外特性が大きく乱れることが予想されます。

本図は2次元表示なことから単一周波数ごとの音圧・指向性情報のみとなるため、スピーカーの指向性を検討する目的で使用するのは少し面倒です。連続的に評価するか、もしくは一部のソフトウェアでは円柱状に3D再合成することで音圧・指向性・周波数情報を複合的に把握することになります。

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(図出典:ケンのオーディオメモよりOmniMicによる測定例)



3-2. Polar maps – the Geddes approach

Waveguideや指向性の研究で著名なGedLee LLCEarl Geddesが提唱するのがポーラーマップです。ポーラマップは、縦軸は軸外角度を示し、0°が軸上、横軸が周波数であり、さらに振幅(音圧)を色温度データに変換することで2D上に3要素を投射します。


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(ARTA)

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(Vituix CAD)

時にこれらのチャートは軸上の周波数応答に正規化されます(つまり、軸上の周波数応答が個々の軸外の応答から差し引かれます)。


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(同じデータを軸上正規化した場合)
この図では0°(軸上周波数)が完全にフラットであるとみなした場合の軸外特性の差分が可視化されます。が、もっとも重要な軸上周波数特性が欠落してしまうため、正規化するのよりも後述するDirectivity Index (DI)のほうが個人的には好みです。

また、ポーラーマップでは1つ平面(多くは水平または垂直のいずれか)を一度に表示するため、一部メーカーでは水平・垂直の二つのポーラーマップを表示しています。
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(図出典:Neumann KH310の水平・垂直ポーラーマップデータ)


3-3. Off axis plots – the SoundStage approach
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角度ごとに1つのプロットを持つ周波数応答チャートを使用する評価法です。
カラーごとに軸外特性(ここでは15°刻み)が割り当てられています。


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SpeakerWorkshopでも作図できますが、”ちょっと”大変です。

個人的には軸外において、ユニット間位相差整合の目安であるreverse nullが観察できるかに用いることにメリットを感じています。
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3-4. Polar response – the Stereophile approach
Stereophile.comではスピーカーのレビューとともに測定データを多く表示していますが、そのなかでポーラーレスポンスグラフを用います。これらは、1/10オクターブスムージングウィンドウFFTアプローチを使用して、-90〜+ 90度の水平軸外測定と-15〜+15度の垂直軸外測定を実行します。
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Stereophile.comでは実際にはグラフは軸上の周波数応答に正規化されています。

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(図出典:sterophile.com, Wilson Audio Specialties Alexia Series 2)

3-5. Listening window, early reflections, sound power – the Harman approach
Harman社(Floyd Toole氏)が発明・提唱する評価アプローチで、スピーカーの軸上、初期反射、後期反射の影響を説明するための複数のプロットを含んでいます。スピーカーの周囲を水平および垂直の360度を10度刻みで測定します。

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(図出典:Harman)

このグラフのデータは、1/20オクターブで平滑化されており、周波数分解能は2Hzです。
このグラフでは、以下の測定値が示されています。
・リスニングウィンドウ:軸上の平均、垂直方向+/- 10度、水平方向+/- 10、20、30のスピーカー周波数特性
 最初の反射または初期の反射:床、天井、前壁、側壁、および後壁のスピーカー周波数応答の平均。
 例えば側壁の影響は、水平方向の±40、50、60、70および80度の平均と考えられます。
・音響パワー(Sound Power):スピーカーから全方向に放射された全音響放射の合計。
 音響パワーは、室内での遅い反射音に対し関連するスピーカーの特性となります。
・指向性指数(Directivity Index , DI)=リスニングウィンドウ(直接音)と、初期反射・音響パワーとの差。

厳密なDIでは垂直・水平を含めた全音響放射と軸上との差を求めることから、1つ平面(多くは水平または垂直のいずれか)を表示するポーラーマップよりも全体像を直感的に把握しやすい側面もみられます。また、スピーカービルドのさい、クロス周波数付近での軸外特性が滑らかであることが重要になりますが、VituixCADではSoundPower/DIを表示してくれます。

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滑らかなDI(waveguide 3way)と乱れているDI(段付きバッフル2way)
軸上周波数はどちらも±2.5dBに収まっていますが、軸外特性に大きな違いが見られます。
2wayではウーファーとツィーターの指向性がクロス周波数付近で合っていないことがDIに顕著に表れています。


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(図出典:Harman)
またごく一部メーカーでも軸上特性・軸外特性とも大きく乱れているものも存在します。
こういった製品では“個性的な”サウンドがすることが予想されます。


フラットな軸上周波数特性と滑らかなDIはスムーズなサウンドが期待されるものですが、
DIの傾き=指向特性がどの程度が望ましいかは非常に難しい問題です。
DIの傾きが大きいほど指向性が狭く(狭指向性)、無指向性(全指向性)スピーカーでは理想的にはDI/SoundPowerは水平になります。

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(図出典:Harman)
(a)ドーム・コーン型ユニットのフロアスタンドスピーカー
(b)中高域用のコンプレッションドライバーとホーン、コーンウーファーを組み合わせたスピーカー
(a)は(b)よりも広い分散(より低いDI(=指向性指数))を有し、コーン/ドームとコーン/ホーン設計との間の特徴的な差があります。


DIは軸上・軸外特性の差から指向性指数を計算していますので、軸上の周波数応答に正規化しても変わらない指数です。逆に言えば、EQを用いて軸上周波数特性をフラットにしてもDIは変わりません。

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2枚目のグラフではhigh boost / low cutが入って軸上周波数特性を整えていますが、DIは変わりません。クロス周波数の設計ではなく、ツィーター高域までのDIを滑らかにしたければ、軸外特性が優れたユニットを用いる必要があり、EQ補正の限界となっています。
(使用したユニットの名誉のために付け加えるならば、この結果は僕の設計したwaveguideプロファイルの限界です。)

先に述べたように、・Polar Plots ・Polar maps ・Off axis plots ・Listening window, early reflections, sound powerのいずれも等価なものを表示しているに過ぎず、切り替えながら多面的にスピーカーの挙動を把握することが重要かと思います。これらの選択性において、VituixCADはSpeakerWorkshopよりもアドバンテージがありそうです。
(続く?)


# by tetsu_mod | 2019-02-16 01:35 | オーディオ | Comments(0)

0.
この稿は
『Sound Reproduction』Floyd Tooleと、『SPEAKER DIRECTIVITY / OFF AXIS RESPONSE: THEORY AND MEASUREMENT TECHNIQUES』Acoustic Frontiers、自作スピーカーマスターブックなど先行の書籍・webから多くの抜粋をしています。

実際に、オーディオ(もしくはホームシアターサウンドシステム)の音質を決めている最重要因子はスピーカーと部屋の2つです。さらにスピーカーに関してはリスナーが音色を判断する最も基本的かつ最大のポイントは軸上周波数特性であり、そこに議論の余地はないものとして稿を進めます。

1.
本稿はもう一歩踏み込んだスピーカーの重要な特性としての指向性(もしくは軸外周波数応答特性)についてです。あるポイント(多くはdesign axis上の任意の1点)でとった無響室周波数特性(もしくは擬似無響室周波数特性)は上記のように重要ですが、スピーカーは多くの場合は球状に音を放射しており(いくつかに場合は線音源もしくは面音源として違う挙動を示す)、直接音(direct sound)、初期反射音(early-reflected sound、多くの場合は一次反射音)、残響音(reverberant sound)としてリスナーに到達します。


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(図出典:『Sound Reproduction』Floyd Toole)

直接音(direct sound)は(スピーカーのdesign axisなどを無視した平行セッティングなどを除けば)、音響軸±15度(listening window)の平均値として、上述の通り最も基本的かつ最大のポイントです。

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(図出典:『Sound Reproduction』Floyd Toole)

初期反射音(early-reflected sound)がどの程度知覚できるか・できないかは諸説ありますが、一般的に中枢神経を含めた人間の聴覚では、スピーカーから直接放射された音の到達より100分の1秒以内(10ミリ秒:msec)に到達する音を区別することは出来ませんので、一桁msec内の音響特性、すなわちスピーカーのみでの音響特性(無響室特性)に加えてスピーカー近傍の壁・床などの一次反射音および直近の壁・床による反射音による打ち消し(キャンセレーション)はすべて一塊の初期到達音(直接音(direct sound)+初期反射音(early-reflected sound))として知覚されます。どれほどの時間内での到達音を知覚できるかは諸説ありますが、もっとも人間の聴覚が鋭敏な1000Hz付近で概ね5〜10msecの間となっているようです。これらのことから、先行の書籍類では初期反射音(early-reflected sound)を20-30msec以内と定義しているものが多いようです。

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(図出典:『Sound Reproduction』Floyd Toole)

残響音(reverberant sound)には、対抗する平面によるフラッタエコーや定在波と言った、スピーカーから直接放射された音の到達より25分の1秒(40ms)以上遅延して到達する音、長時間の残響はこだまとして聞こえる音も含まれます。

これらの初期反射音(early-reflected sound)や残響音(reverberant sound)は、聴覚上は再生環境の物理的な空間認識などに関与すると言われています。初期反射音(early-reflected sound)は音場感(広がり)などに強い相関性を持ち、残響音(reverberant sound)は包まれ感などに強い相関性を持つことが報告されています。

このような初期反射音(early-reflected sound)や残響音(reverberant sound)の制御は、スピーカーの指向性(もしくは軸外周波数応答)と部屋の相互作用のバランスによってなされますが、高域になるほどに(特に部屋の遷移周波数以上では)スピーカーの指向性が部屋の音響特性よりも支配的になっていくため、(反射点に一般的に吸収体を取り付けるというカットアンドトライのアプローチ以前に)これらを考慮してスピーカーを設計する必要があります。


2.
指向性(軸外周波数応答)とは、スピーカーの周波数応答が軸外の角度で変化する方法を表すのに使用される用語です。 広指向性スピーカーは軸上・軸外での音圧差が維持される傾向のものを、狭指向性スピーカーは、軸上・軸外での音圧差が大幅に異なる傾向のものを、無指向性(全指向性)スピーカーは軸上・軸外での音圧差が(理想的には)ないものを示します。


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(狭指向性スピーカーの軸上・軸外周波数特性のイメージ図)


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(広指向性スピーカーの軸上・軸外周波数特性のイメージ図)


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(無指向性(全指向性)スピーカーの軸上・軸外周波数特性のイメージ図)


完璧な点音源スピーカー(極小の1点から全帯域の音が放射される)では、音源が波長に対して小さいままであるため、放射は無指向性(全方向性)であり、軸外での周波数応答に変化はないはずです(=理想音源、一般論化のために、ここではダイポール特性やクアドラポール特性は除く)。実際には、無限大バッフル上にマウントされた状態でファーフィールドリニングの環境において波長が音源(ここではスピーカーユニット直径)に比べて小さくなり始める(高域になってくる)と、放射は「ビーム」し始め、軸外周波数応答は乱れ(もしくは指向性が狭くなり)ます。これは、振動板のさまざまな部分(たとえば、エッジ側とドーム頂点側)からの音が互いに位相がずれてファーフィールドに到着することで、視聴位置では位相差により音圧が相殺されるためです。

この現象は周波数とスピーカーユニット直径によって規定されてしまうため、例え20kHzまで軸上では伸びているフルレンジユニットであっても、10cmなら10cmなりの、20cmなら20cmなりの高域での「ビーム」(指向特性の低下)からは逃れられないことになります。ツィーターユニットでは現在1inchドーム型が主流になっている背景は、軸上の高域が延ばしやすいだけでなく軸外への放射が(古典的な1.5inchドーム型や2inchコーン型などと比較して)広く取れることも理由であり、今後は3/4inchなども拡充していくかもしれません。
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(図出典:自作スピーカーエンクロージャー設計法 マスターブック)


ちなみにこの現象はバイオリンなどの楽器でもよく知られており、なにもスピーカーに限った現象ではありません。

結論として、多くの場合にスピーカーに求められるのは、広い帯域において(軸上フラットであることを前提として)、”よく制御されたスムーズな”軸外特性を有することであり、結果として(部屋の音響特性との相互作用のうえですが)”よく制御されたスムーズな” 初期反射音(early-reflected sound)や残響音(reverberant sound)を得ることによって聴感上のメリットとして音場感や定位といったより良いステレオイメージを獲得することです。
狭指向性・広指向性・無指向性(全指向性)スピーカーのいずれが望ましいのかは視聴距離・部屋サイズ・部屋吸音率、そしてなによりもリスナーの好みに大きく左右されるものですが、いずれに場合においても”よく制御されたスムーズな”軸外特性が望ましい性能です。(続く?)


# by tetsu_mod | 2019-02-04 00:16 | オーディオ | Comments(0)

ATC SCM50P(36)

今回はtw/midはパッシブクロスさせますが、twのホーン補正とmidのlow-cut(high-pass)はIPD1200のデジタルフィルタを使うつもりです。なので、全体でみるとパッシブ・アクティブのハイブリッドになります。

VituixCADにはアクティブフィルターも設定できる機能があるので触ってみました。

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この通りになるならまぁまぁの性能かと思います。
これ以上はバッフルデザイン・waveguideデザインの問題ですね....
つまるところのスピーカーとしての性能の限界がバッフル(waveguide)のプロポーションの問題に集約されるのは面白いことです。高性能なプロポーションと所有欲を満たすデザインの両立が難しいところですし、メーカーのすごいところですね。


ところでアクティブフィルターでいくら軸上特性(今回であればホーン補正)をかけたところで、Directivity Index(=DI)は改善しません
DIについては別稿で説明したいと思います。




# by tetsu_mod | 2019-02-03 12:27 | オーディオ | Comments(0)

ATC SCM50P(35) コイル選定

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tweeter側は3rd+T-notchでアッテネートなし、
mid側は2nd+LCRでこちらもアッテネートなしです。

2way speakerの時にはDCRを優先してコアコイルもしくは出来るだけ線径の太い単線空芯コイルを使ってきましたが、YRさんのブログ記事をみて俄然リッツ線コイルに興味が湧きました。

大まかに乱暴な結論は「リッツ線コイルの方が理想的素子に近いのではないか」です。
この実測結果のメカニズムは浅学にして知りませんが、箔コイルとの違いは表皮効果ではなく相互インダクタンスの影響かとも思っています。
でもハイエンドメーカーでは箔コイルが人気ですね…。


現在入手できるリッツ線コイルはJantzenSolenにしか見当たりませんでした(かつてはTANGOにあったようです)。
Solenは8AWG(!!)もあって、woofer・sub-woofer用にDCRが低いコアコイルとも比較対象たりうるかと…。

国内業者が取り寄せを快く引き受けてくれたこともあり、今回はJantzen 15AWG Air Coil LITZ Wireにしました。
mid low-pass 2nd filterのL1=0.65mHでDCR=0.27Ωですし、個人的な目安の0.3Ωを下回っています。

tweeter high-pass 3rd filterのL2も同じくJantzen 15AWG Air Coil LITZ Wireにしました。
tweeter f0 dumpingはT-notchにしましたが、その効き具合はL2のDCRに大きく依存します。
L2=0.125mHでDCR=0.10Ωで、しっかりdumping効果が得られそうです。

また、midはActive filterでhigh-passをかけるつもりですが。ユニット保護の観点とこれまでの自験例から、LCR f0 dumpingを入れることにしました。ここはコストも鑑みて20AWG単線空芯コイルにしました。

# by tetsu_mod | 2019-01-20 23:22 | オーディオ | Comments(0)