multipoint REW測定(9 終)

最後に、ターゲットカーブとEQ補正の作例を
・複数点計測
・複数の測定データ
・低域のみ
・cutのみ
・最小補正
のルールに則っても、最終的にどのようなターゲットカーブ・補正がいいかは最後は好みだと思っています。ケーブル・インシュレーターの好みと同じように、個々人のオーディオマニアの好みが出ると思っています。

例えば、個人的には1/3オクターブ平均化周波数特性を元にターゲットカーブを決めますが、今回のデータでは-0.6〜0.8dB/octの右肩下がりのカーブが候補として考えられます。
それぞれ、ターゲットカーブと補正値カーブです。

-0.6dB/oct
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-0.7dB/oct
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-0.8dB/oct
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すっきりパターン
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右肩下がりが強いほど、重厚な音になりますし、
右肩下がりが弱いほど、軽快な音になります。

右肩下がり特性はスピーカーの軸外音響特性および部屋の反射特性に左右されるものです。
(指向性が悪く、吸音の強い部屋ほど、右肩下がりが強く、重厚な音になる)
それでも、この最後の微調整は好みの余地があると感じています。
実際に、-0.6~-0.8dB/octのターゲットカーブに基づく補正は、それぞれ大きく傾向が違いますし、それは拙宅ではケーブルの変化よりも大きく、かつ好みに基づいて判断されるものと感じています。

一旦これでmultipoint REW測定の項を終わろうと思います。
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by tetsu_mod | 2016-07-02 19:20 | オーディオ | Comments(0)

前々回に1点だけの全帯域フラットへboost補正することは予期しないpeakをもたらすことから、あまり意味がないと結論付けましたが、これを別の観点で見るとどうなるのか。

今回は時間軸と軸外音響特性で考えてみます。
「豊かなステレオイメージには滑らかな軸外音響特性が必要」は近年広く提唱されており、無指向性スピーカーでない前方投射型スピーカーでもキーワードになっています。コンシューマーパッシブスピーカーではAvalonが早くから提唱していた記憶があります。

理想的な軸上音響特性・軸外音響特性をもつスピーカーと、理想的な反射特性を持つ壁を考えた場合、直接音・反射音ともに滑らかな特性になるため、なだらかな右肩下がりのRTA特性が得られます。
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ここで、軸上音響特性が優秀だが、軸外音響特性および反射係数が良くない場合を考えると...
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直接音は平坦な特性が得られますが、RTAでは凹凸の特性になります。
ARTAではgate measurementを用いることで直接音と間接音を分けて測定することが可能ですが、多くの測定ソフトウェアでは単純なRTAのみしか搭載されておらず、この凹凸がスピーカーの軸上特性なのか、軸外特性なのか、部屋の特性かを見分けるのは非常に困難です。


この不十分な情報のみのRTAで全帯域フラットへの補正カーブを組むとどうなるでしょう。補正カーブはあくまでスピーカーの振幅を変えるだけのものなので、直接音だけ・間接音だけを補正することは不可能です。
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RTAの見かけだけは滑らかな美しい特性になりますが、直接音は本来とは違う音になってしまうため、定位が崩れたり、一部の帯域だけが強調されることになります。これが軸外特性が悪いスピーカーを補正しても意味がない理由です。

高域方向はさておき、一般的に軸外特性が悪いスピーカーはクロスオーバーの設計が悪く、ユニット間の軸外特性が揃っていないために中抜けをおこしていることがほとんどです。おそらく、従来のスピーカー自作で「クロス周波数は人の声の帯域から外すべき」と言われているのはこの理由に根ざすものだと思われます。
個人的には、軸上特性がフラットかつ、満足のいく軸外特性をもつスピーカーは中域以上は補正不要だと思っています。補正は低域のみで、中高域の特性に満足がいかない場合は部屋の反射特性を対策すべきです(反射・吸音)。

じゃあ、僕がしているような低域は補正しても構わないのか?という疑問ですが、個人的に取組んでいる低域の補正は部屋残響特性の調整です。また、直接音の補正による定位に関してですが、人間の方向定位感覚は高域では両耳音圧差(音量)によりますが、低域では両耳時間差(位相差)によります。
むしろ部屋残響特性により低域がカブって位相反転をおこす方が問題になると考えられています。

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矢印の部分で低域の位相回転が変極しており、逆位相の強すぎる反射音(=残響音)の影響が見られます。実際に音圧変化も強いdipを示します。
なので、低域の補正に関してはむしろ定位が良くなるのでは、と考えています。

結論としては、
・スピーカー設計の段階から軸外音響特性は定位に多大な影響を及ぼす
・ダメなスピーカーはEQかけてもダメ
・低域に関しては部屋の影響のほうが大きそうなので、EQをかける価値があるかも。


よく、EQでの補正をしていると、
「アクセサリー(ケーブル・インシュレーターなど)を否定するものなのか」
「すべてのスピーカー・部屋で同じ音になるのか」
「ルームアコースティック対策(パネルなど)は不要になるのか」
などを聞かれますが、答えはどちらも否です。
あくまで低域かぶり、部屋の残響特性への対処の1つの手段としてしか、現代のEQ技術では使えないと思っています。
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by tetsu_mod | 2016-07-01 19:35 | オーディオ | Comments(2)

ここまで、個人的にEQ補正は
・複数点計測
・複数の測定データ
・低域のみ
・cutのみ
・最小補正
として行ってきました。制約が多いですよね。

試しに、
・中央前列1点測定
・リアルタイムアナライザーデータのみ
・全帯域補正
・cut,boostあり
・補正上限なし
とした場合、どうなるかをシミュレーションしてみます。

まず、中央前列での測定データを元に、A社のデジタルイコライザーを模して1/6アベレージングを元に全帯域補正を作ってみます。

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えんじ色:補正前
赤色:補正後
これだけを見ると、とても美しいフラットネスです。

この場合の補正カーブはこのようになります。
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この補正カーブを、別の位置での測定データに適応してみます。
すなわち、一点データを元に全帯域boostもしてフラットにした場合、椅子をリクライニングしたらどうなるか、というシミュレーションです。
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濃紫色:補正前
薄紫色:補正後

220Hzおよび1kHzに強烈なピークが現れています。
すなわち、1点だけのフラットへboost補正しても、椅子をリクライニングしただけで意図しないピークを持つことが分かります。そして、耳の位置を全く動かさずに聴かれる人を除いては、このような補正はむしろ違和感を感じますし、むしろないほうがマシだと思っています。

個人的な結論としては、room EQはフラットネスを約束するものでも、夢の高音質を約束するものでもなく、あくまでアコースティックな追い込み(スピーカー位置のセッティングや、ルームアコースティックなど)のさらに先に、どうしても乗り越えれない部屋の影響をエレクトリックに乗り越えるためのツールです。そして、それは制約の多いリビングオーディオほどその需要は高いと思っています。
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by tetsu_mod | 2016-06-27 15:25 | オーディオ | Comments(0)

multipoint REW測定(5)

ターゲットカーブの作り方で最小補正としましたが、
拙宅では150Hz以上の傾きをベースにターゲットカーブを設定するようにしています。

というのも、残響特性が250Hz以下で残響時間が長くなるため...
RT60
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残響時間により残響減衰が揃わないためです。
Decay(40-80-120-160msec)
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Waterfall
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Spectrum
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Decay, Waterfall, Spectrumで見ても150Hz以下のpeakが残っていることが分かります。
この部屋に規定されてしまう残響過多を対処することこそがroom EQの目的だと思っています。さらに言えば、ベーストラップや共鳴管で対処できないリビングオーディオこそroom EQの真骨頂かと...
また、このような特性は一点RTAで周波数特性だけをみても汲み取りにくい情報です。
しかし、複数の測定方法の意味と解釈を勉強すれば、もっと面白くなると感じています。
(続)
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by tetsu_mod | 2016-06-26 11:23 | オーディオ | Comments(0)

multipoint REW測定(4)

さて、最近ではすっかり堕落オーディオマニアと化しているので、
お恥ずかしながら寝そべってyou tube、なんて時間も多いです。
そこで、今回は前列・後列で平均化したデータ、平たく言えば6点全部で平均化されたデータから補正カーブを作ってみようと思います。

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緑線:Rch
紫線:Lch

測定データは決定しましたが、次の問題はターゲットカーブです。

個人的には、あくまで個人的には、最小限のpeak補正が基本だと考えています。
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その一方で、100-200Hzを削っていくと、最低域の量感は保たれたままにミッドローは締まってキレよく聴こえ、Hi-Fiな再生に聴こえる傾向のようです。
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100Hzまではフラットですがそれ以下を3-6dB程度持ち上げているスピーカーがありますが、このような効果を狙っているものだと思います。



さて、Genelec社は「視聴位置でプラスマイナス2.5dB以内の再生が理想」と言っていることですし、
6点測定データ・+2dB以上を最小限補正としてみました。

Rch 補正カーブ
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Lch 補正カーブ
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by tetsu_mod | 2016-06-25 20:14 | オーディオ | Comments(0)

multipoint REW測定(3)

今度は後ろの位置での測定波形です。
前回同様、R/L chそれぞれに 後左・後中・後右で比較してみます

Rch 後左・後中・後右
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Lch 後左・後中・後右
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今回も左右のデータは平均化した上で、
前位置・後位置でのデータを比較してみます。

Rch 前(青線)・後(緑線)
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Lch 前(ピンク線)・後(黄線)
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200Hz以下の特性は、視聴位置と後ろ壁との距離が支配的であることがよく分かります。
30cmバック・10cm下がりのリクライニングでこれだけ変化します。
個人的に、このようなデータをみるだに一点測定・全帯域フラット補正・ブーストありは頭を全く動かさないという条件でない限り、困難ではないかと痛感します。

さて、これらのデータを元に補正EQカーブを作っていくのですが、
1. メイン視聴位置(前)で作る
2. 前後位置平均化で作る

これはリスニングポイント(スタイル)の比率と好みでいいかと思います。
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by tetsu_mod | 2016-06-23 22:54 | オーディオ | Comments(0)

multipoint REW測定(2)

6点もあるとデータの整理が大変です。
まず、R/L chそれぞれに 前左・前中・前右で比較してみます。

Rch 前左・前中・前右
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Lch 前左・前中・前右
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例えば80Hzのdipはマイク位置で変わることから、おそらく視聴位置左側の壁との距離によるキャンセレーションディップであることなどが多くのことが分かります。

基本的なroom EQの思想としては、dipの対処ではなくpeakの制御ですので、その視点で見るとピークが出る周波数・音圧は左右ではpeakの発生する周波数およびpeakの音圧上昇は左右で位置を変えても共通しているようです。

今回は1点の視聴位置でのみ最高の音圧分布ではなく、複数の視聴位置である程度の音圧分布を目指すのがゴールですので、左右のデータは平均化してもいいと判断しました。

前左・前中・前右でaverageしたR/Lch
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(続)
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by tetsu_mod | 2016-06-22 17:07 | オーディオ | Comments(0)

multipoint REW測定(1)

拙宅は変型のリビングオーディオのため、定在波シミュレーションがうまくできません。
そこで、懸案だった複数箇所での測定をREWでしてみることにしました。

測定箇所はリスニングポイントを中央前列とし、
後列は少し寝そべった体勢をイメージし、30cmバック・10cm下がり
左前・中前・右前
左後・中後・右後
の6点測定としてみました。

Rch 6points
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Lch 6points
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(続)
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by tetsu_mod | 2016-06-21 13:00 | オーディオ | Comments(0)

Room EQ確認

果たして、room EQで補正した結果はシミュレーションした通りになるのでしょうか?

測定日にちが違い、マイクの位置が完全には一緒でないことは承知のうえで比べてみました。
2016年4月27日 Rch 補正なしデータをもとにEQを設計
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2016年4月27日 Rch 補正なしデータと
2016年6月20日 Rch 補正ありデータとの比較。
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どうも、補正はうまくいっていそうです。

次は、以前より懸案だった複数ポイントでの測定を行ってみたいと思います。
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by tetsu_mod | 2016-06-21 00:35 | オーディオ | Comments(0)

Room EQ雑感(続)

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by tetsu_mod | 2016-06-08 23:38 | オーディオ | Comments(0)