Guarneri Homageは今回で最後の考察です。

Guarneri Homageは言うまでもなくFrancoSerblinが作った名機ですが、氏の作品は『感性による作品』というポエミーな評価を雑誌でも良く見かけます。しかし、個人的にはエレクタ・アマトールに端を発し、すべて『音響工学とデザインの高度な融合』というのが感想です。
ラウンドエンクロージャー、ユニットぎりぎりのバッフル、ラウンドバッフル、フレアポート、背面ポート、ツィーターフレームを削ってまでユニット距離を詰める、革張りによるバッフル反射の拡散、金属・木材の貼り合わせによるエンクロージャー共振の拡散、コアコイルの積極的な採用、クロスオーバー部品の樹脂封入、高さ調整式のスタンドなどなど、です。これらの技術をあのデザインに落とし込めるのは、氏のセンスだと感服するところです。

時代ごとに音響工学の先端をいっていたFrancoSerblinが、ガルネリでなぜあんなに高いスタンドを用意したのか、ずっと不思議でした。
が、ノーマルクロスオーバーのツィーター軸上reverse nullと、ツィーター軸上でのインパルスレスポンス測定をして、少し分かった気がします。

normal passive crossover far field, reverse polarity
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もう、アクティブ化しており手元を離れているため、確認することはできませんが...
おそらく、Guarneri Homageはツィーター軸上ではなく、リスナーは軸上よりも下方向で聴くことを想定してユニット間の位相差を合わせていると思います。
そうでなければ、せっかくのウーファー・ツィーターフレームでユニットの高さを微調整している意味がないですし、雑誌で「ソファに座って、ヴァイオリニストの演奏を聴くイメージ」と書いてあった記憶がおぼろげにあります。
氏が存命であれば、どれくらいの距離・耳の高さを想定したのかを聞いてみたかった...
また、8kHzまでのびた6インチユニットを2.5kHzでクロスさせているのも、おそらくは指向性を広くとりたいためもあると思います。つくづく、凄いスピーカーです。

そこで、最後にFrancoSerblinへのHomageとして、氏の想定した聴き方で、ユニット位相差を合わせるディレイ設定を検討してみました。
今回は軸上1mで0.15msecのディレイをかけることで位相差があいました。ツィーター・ウーファーの鉛直距離が135mmですから、このときのウーファー〜マイク距離は1.009mです。ツィーターの床からの高さは1197mmです。
ディレイとこれらのデータから、三角関数で任意の距離・耳の高さで演算上の位相差を合わせられるディレイの計算シートを作製しておきました。もちろん、実測でreverse nullを見ながら追い込むのがいいのでしょうが、とりあえずの設定は可能と思われます。

Guarneri Homage、素晴らしいスピーカーでした。
一生付き合えるモノだと思います。(終)
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by tetsu_mod | 2015-03-31 23:16 | オーディオ | Comments(6)

実は前回までの(1)〜(4)で4時間の作業です。
更新を引き延ばしすぎですね。

前回作製したクロスオーバー設定では、バッフルステップの補正(特にウーファー側)をしていないので、中域以上で6dBの上昇をしています。

normal crossover / active crossover LR2
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んが、Guarneri Homageのような複雑な形状のバッフル(エンクロージャー)でのバッフル補正なんて、どのようにしていいか分かりません。
そこで、active crossoverでのfar fieldデータをまず作って、normal crossoverのfar fieldデータの差分を見る事で、純正のバッフルステップ補正を見る事にしてみました。

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コレがそのデータです。
far fields測定ですので、250Hz以下は無視です。
ユニット(ウーファー)直径の実測をもとに、バッフル形状やサイズをシミュレートすることで、このバッフルステップ補正に近い値が出るようなバッフル形状を逆算してみました。

結果、ウーファー125mm、バッフル形状136mmがピッタリでした。
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これは、ガルネリのウーファーのフレームの内側の値です。
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非常に興味深いことは、ガルネリのウーファーフレームはバッフルステップを規定し、さらにツィーターとのタイムアライメントの調整を行っていること、また、バッフルステップはバッフルの斜めカットぐらいでは分散されず、最初の角によって規定されるということです。本格的にバッフルステップの分散を狙うのであれば、綺麗なラウンド加工が必要そうです。

ついでに、ツィーターもフレームにそったバッフルステップを計算してみます。
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これらのバッフルステップカーブを、シェルビングフィルターで近似の設定をして、前回の設定に追加して、とりあえずのactive crossoverの設定はとりあえず終了です。
(最終周波数特性を計測していません、悪しからず...)

しかし、バッフルステップの補正カーブをシェルビングフィルタに落とし込む公式とか、あるのでしょうか。探しているのですが、なかなかコレといったものが見つかりません...
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by tetsu_mod | 2015-03-30 15:44 | オーディオ | Comments(2)

MAGICO Q3

サウンドスペースにて、MAGICO Q3を聴かせてもらいました。

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MAGICO QシリーズはQ1しか聴いたことありませんでした。
Q3のローは余裕がありながら、量感は欲張っておらず、引き締まってます。
Q1と比較すると、Q3のほうが少しゆったりしてるかと...Q1のほうが禁欲的です。
空間や定位は意外とQ1と遜色ないかも、トールボーイなのに優秀。
感心したのは、優秀録音vo.も綺麗な一方で、雑な録音もパリっと聴けるし、コレいいスピーカーです。

MAGICOのQシリーズはQ1,Q3ともに高い性能と音楽のバランスが素敵、でもQ1とQ3がちょっと性格が違うのがまた面白かったです。
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by tetsu_mod | 2015-03-26 23:18 | オーディオ | Comments(2)

ノーマルクロスオーバーをバイパスして組み上げたGuarneri Homageを、アクティブクロスオーバーの設定をしていきます。アクティブフィルターの設定を一つ触るたびに、マイクで実測していく作業です。
Tw esotar T-330Dはfs 750Hzですし、Wf Audio technology 6"も軸上で8kHzとまで延びたユニットを2.5kHzクロスですので、かなり余裕があります。特段にEQをかけなくてもフィルター回路だけでLR2/LR4ともに肩特性が得られました。
で、そのうえでインパルス測定をすると、0.15msecほどのディレイがあります。
最終的にはreverse nullの形(対称性)を見ながら、ディレイを追い込みます。

active crossover LR2 2.5kHz delay 0.145msec
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active crossover LR4 2.5kHz delay 0.165msec
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でも、これじゃ実はフラットじゃありません。
normal crossover / active crossover LR2
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by tetsu_mod | 2015-03-26 15:21 | オーディオ | Comments(3)

Guarneri Homageを分解していきます。

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ツィーターはDynaudio Esotarですが、木製削り出しのバックキャビティが装着されています。
配線はハンダ付けです。

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ウーファーはAudio Technologyの逆ドーム6inchです。
こちらも配線はハンダ付け。

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ネットワークは樹脂で固めらており、詳細は不明です。
今回はネットワークの解析が目的ではないですし、内容積が変わるのも嫌なので、取り外しません。取り外し、大変そうですし。吸音材はスポンジのようですが、初期型のGuarneri Homageは吸音材の素材が異なるようです。他にも、ネームプレートなどにも違いがあるそうです。

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バスレフポートはバックパネルと一体化しています。
スピーカーターミナルとの配線は丸端子です。


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所有者の意向で、カナレ 4S8を金メッキ丸端子でスピーカーターミナルと接続、ユニットはハンダ付けして完成です。
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by tetsu_mod | 2015-03-21 23:59 | オーディオ | Comments(0)

前回の検討で、Guarneri Homageの純正ネットワークがAcoustic slope: Linkwitz-Riley -12dB/octなことが分かりました。次にクロス周波数を検討するために、ARTAで測定したデータをSpeakerworkshopに取り込んでみました。

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黄色:実測normal polarity
白色:実測reverse polarity
緑色:ウーファー(点線:位相
赤色:ツィーター(点線:位相

far fieldデータしかないため、250Hz以下はカットしています。
"crossover frequency: 2.5kHz. Electrical crossover slopes: 1st-order, 6dB/octave."と記述されているのですが、2.2〜2.3kHz程度でのクロスに見えますね...

んが、Stereophile.comの測定では2.5kHzクロスに見えます。個体差?経年変化?測定誤差?

今回のゴールは、メーカー発表通りの2.5kHzとしましょう。
さて、これで2.5kHz LR2を作ればいいことが分かりました。
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by tetsu_mod | 2015-03-20 23:10 | オーディオ | Comments(0)

Sonus Faber社の名機スピーカー、Guarneri Homageのアクティブクロスオーバー化のお手伝いをさせていただく機会がありました。Guarneri Homageといえば1992年発売ですから、もう22年前のスピーカーですが、その後のGuarneriシリーズのなかでも、僕はHomageがもっとも姿・音ともに好ましいと思っています。今回、Active crossoverにされるとのことで、喜んでお手伝いさせていただきました。

Guarneriシリーズはかなり背の高いスピーカー(スタンドが高い)ですが、試聴位置も高くしてツィーター軸上で聴かれているとのことなので、今回はツィーター軸上1mでの周波数特性で追い込んでいくことにしました。
まずはノーマルクロスオーバーの評価をしていきます。

normal passive crossover far field, normal polarity
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絶対位相回転も穏やかですし、大きなdip,peakもありません。
10kHzからやや上昇、18kHzから減衰しています。
Stereophile.comの測定とほぼ同様です。
今回はクロスオーバーのみの改造ですので、near field,port responseの測定はしていません。far field測定のみなので、300Hz以上しか評価対象にしていません。

normal passive crossover far field, reverse polarity
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純正ネットワークで、tw/wfを逆相接続にした場合です。
reverse nullも出ていますが、形はやや歪です。

ここから、ユニットそれぞれの特性測定を行っていきます。
normal passive crossover far field, tweeter
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normal passive crossover far field, woofer
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インパルスレスポンスの波形から、tw/wfは逆相接続になっていることが分かりました(画像なし)。
つまり、上記のreverse nullは正相接続で観察されており、12dB/octでのクロスが予測されます。
ところが、"crossover frequency: 2.5kHz. Electrical crossover slopes: 1st-order, 6dB/octave."と書かれています。
ホンマか?
そこで、ARTAのtarget curveを重ね合わせてみます。
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Linkwitz-Riley -12dB/oct, -24dB/octを重ねてみたところです。
ここから、Guarneri Homageの純正クロスオーバーは電気的には-6dB/octの設計だとしても、実際の音響的動作はLR2 crossoverであることが分かりました。

(続)
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by tetsu_mod | 2015-03-16 09:07 | オーディオ | Comments(4)

PCM-10(9)

エンクロージャー(バッフルサイズ)、ユニット、バスレフポートが決まったので、次はユニットの配置の検討として、バッフルステップのシミュレートです。

Tannoy LGM,SRMなどはバッフルの中央にユニットがありますので、このスタイルでまず検討します。今回はEdgeとBaffle Diffraction and Boundary Simulator 1.20の両方でシミュレートしてみます。しかし、ツィーターはドーム型でなくコンプレッションホーンのため、このシミュレーターの通りに動作するのかは不明です...

ツィーター 中央
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ウーファー 中央
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実はバッフル中央への配置は、バッフルステップ(バッフル縁における反射・解析による周波数特性の変化)は最悪です。そのため、一部のメーカーではラウンドバッフル加工やツィーターを偏心させて配置しています。

ツィーター 偏心
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ウーファー 偏心
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右側のグラフで灰色の線は中央配置の場合です。
バッフルステップの出方や周波数は変われど、リップルの幅はほとんど変わらないですね...


ツィーター 面取り
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ウーファー 面取り
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むしろ偏心させるより、少しでも面取りしたほうが良さそうです。


ここは性能より見た目、ユニットは極力中央に配置することにしました。
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by tetsu_mod | 2015-03-14 00:00 | オーディオ | Comments(4)

PCM-10(8)

エンクロージャーが決まったので、バスレフポートの検討をします。
バスレフポートの設計は初めてですが、とても難しそうな印象です。
最終的に吸音材とポート長の微調整になるのでしょうか。

そこで、シミュレーターでざっくりと設計してみることにします。
まず、ポートサイズを決めなければなりませんが、ポートはJantzen Audioのポートを用いることにしました。これはポート全体が軽いテーパー状になったうえで出口がフレア状に整形されており、ポートノイズに配慮した構造になっています。

[http://www.jantzen-audio.com/port-tubes/]

ウーファー直径が210mmですから、ポート開口径は100mmのものを選びます。
これで、実行振動板面積に対するポート開口面積は22.68%になります。

T/Sパラメーターは実測とメーカーデーターの2パターンとし、これらのデーターをシミュレーターに入れてみます。
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自作スピーカー設計プログラム
[http://www.asahi-net.or.jp/~ab6s-med/NORTH/SP/index.htm]

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[WinISD]

ざっくり動かしてみると、まずエンクロージャーが小さいです。
吸音材は多めが良さそう? ポートは65Hz付近が良さそうです。
ポート長は142mmのものを購入して、カットして調整することにしました。
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by tetsu_mod | 2015-03-11 22:46 | オーディオ | Comments(0)

PCM-10(7)

入手したNS-470ですが、後ろ側や角で一部付き板にはがれがあるものの、全体的には綺麗です。ジャンクコーナーには他にもVictorやKENWOODがありましたが、YAMAHAが木工は一番綺麗でした。
が、ドナーですので即分解です。ユニットと吸音材はすべて廃棄します。

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エンクロージャーの作りは単純です。
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ここにサブバッフルや補強を入れていくつもりです。

さて、エンクロージャーが決まったので、次はバスレフポートの設計です。(続)
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by tetsu_mod | 2015-03-10 22:22 | オーディオ | Comments(0)