Linkwitz Transform-4

密閉型スピーカーでの目標とする最低共振周波数(fc)と先鋭度(Qc)ですが、どこが理想的なのでしょうか。


(http://www.maximintegrated.com/jp/app-notes/index.mvp/id/4525)

一般的によく言われるのは、Q=0.5の場合は臨界制動と呼ばれ、過渡特性が最良の状態です。もう一方が、 Q=0.7の場合では周波数特性が最良となります。質か量かの問題ですが、一般的にはQ=0.7〜0.9がいいと言われているようです。

そこで、市販密閉型スピーカーの特性表を何個か集めてみました。

クリプトン KX-5
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(http://www.kripton.jp/fs/kripton/kx-5)

以下はStereophile webからのデータです。

Harbeth HL-P3
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ATC SCM7
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ATC SCM11
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Aerial acoustic 5B
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MAGICO V3
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MAGICO Q5
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眺めるとなかなか面白いですね。
クリプトンはどうもこのQの制御にはこだわっているようで、『7.厳選されたミスティックホワイトと天然ウールのハイブリッド吸音材による低域制動(Qo)特性の調整』とうたっています。聴いたことがないので、なんとも言えませんが... 特性を見る限り、Qは0.5〜0.7でしょうか、低域の伸びよりも過渡特性にこだわったように見えます。

悩ましいところですが、まずはQ=0.707で設計してみることにしました。
Audio Machinaも『The Bomb の回路構成は、Linkwitz フィルターをベースに構成され、The Ultimate Monitor との組み合わせにおいて、ベース再 生の指標となる物理量 Q値が密閉型スピーカーの最適値である0.7を厳密に実現するようにされています。』と言っていることですしね。


最低共振周波数ですが、極論すればこれは低ければ低いほど、ワイドレンジな再生が可能になりますが、中域の音圧に対して低域の音圧がブーストされるため、過振幅によるユニット破損の可能性や、非線形歪みの増加といったデメリットがあります。SCM12sl/ⅡのSCM20sl用ユニットは、sl化にモデルチェンジの際に、確か大振幅への歪み率低下などを言っていた気がします。うろ覚えですが、±9mmの振幅を補償していたような... 間違えていたらすいません。
答えは出ませんが、ここもAudio Machinaを参考にさせてもらって、1オクターブの低域拡大を目指そうと思います。

最終的に、
・目標とする最低共振周波数(fc) = 35Hz
・目標とする最低共振周波数での先鋭度(Qc) =0.707
となりました。これで、必要なパラメーターは揃いました。(続)
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by tetsu_mod | 2015-01-30 19:52 | オーディオ | Comments(0)

Linkwitz Transform-3

Linkwitz Transformを設定するために、
・スピーカーの最低共振周波数(f)
・スピーカーの最低共振周波数での先鋭度(Q)
を測定する必要があります。

これらはインピーダンスカーブから求めることが出来ますが、ARTAの姉妹ソフトウェア、LIMPにはウーファーの有効直径を入力することで、これらを計算してくれます。

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今回はエンクロージャーの設計などはしませんので、Vasなどの測定はしません。
また、最低共振周波数はユニットのコンプライアンスとも相関するため、一般的にエージングがすすんでエッジやダンパーが柔らかくなると低下します。SCM12sl/Ⅱのユニットは12年も使っているので、もう今更エージングは必要ないと思いますが、それでも測定前に低周波音源でストレッチはしておきました。

LIMPの自動計算の他に、自分でも手計算してみましたが、ほぼ同様の結果が得られました。
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これは実はLIMPで自動測定したのと別の日のデータに基づいています。
fsは2Hzほど変動していますが、Qtはほぼ一緒です。

そこで、fs=69Hz, Qt=0.84として設計することにしました。
次は、目標とする最低共振周波数(fc)と先鋭度(Qc)の設定です。(続)
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by tetsu_mod | 2015-01-28 21:36 | オーディオ | Comments(0)

KLOTZ AIS MC5000

日本に導入されはじめた、KLOTZのケーブルを試してみました。

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フラッグシップモデルのMC5000です。
取り回しは良好、静電容量からは長く引き回すことを想定したケーブルでしょうか。
50cmでApollo - IPD1200のインターコネクトとして使ってみました。

比較対象 Belden YR46540
メタリックに痛くならない範囲で、子音の立ち方やブレスの感じが特徴かと。
空間の展開は全体にやや前に出て、ハッキリすると思います。
いいケーブルですね、女性vo.好きで、プリ〜パワーで2mぐらいで使う場合はハマりそう。
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by tetsu_mod | 2015-01-28 11:18 | オーディオ | Comments(0)

Linkwitz Transform-2

Linkwitz Transformは本来、密閉orオープンバッフルに対するOPAMPアナログ回路で提唱されています。6年前には、回路図・素子定数まで設計しましたが、当時使っていたパワーアンプ(LM3886)では60Wしか出力が取れないため、断念しました。

しかし、現在はLab.Gruppen IPD1200がメインアンプです。
2x600 W@4Ωの強力なパワーと、IntelliDrive ControllerによるDSP制御で、Linkwitz Transformを再現できないかと考えました。
同じような発想を、フランスのDEVIALET社がSpeaker Active Matching(SAM)テクノロジーという名称で行っています。これは市販のスピーカーをプリセットして、低域特性の調整を行うようです。探してみたところ詳細は秘密のようですが、Linkwitz Transformに近しい補正ではないかと思っています。


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(https://ja.devialet.com/speakers-jp/magico/magico-q1)

BASS EXTENSIONが38Hz→16,4Hzとなっていますが、MAGICO Q1は公式スペックが± 3dB 32Hz 〜 50kHzとなっていますので、BASS EXTENSIONの値はスピーカーの最低共振周波数だと思われます。興味深いのは、DEVIALET社 SAMでは、バスレフスピーカーも補正対象です。どうやってるんだろう...


DEVIALET SAMのアルゴリズムは不明ですが、SCM12sl/Ⅱは密閉ですので、深く考えずにLinkwitz Transformを検討しましょう。

Linkwitz Transformを設定するのに必要なパラメーターは、
・スピーカーの最低共振周波数(f)
・スピーカーの最低共振周波数での先鋭度(Q)
・目標とする最低共振周波数(fc)
・目標とする最低共振周波数での先鋭度(Qc)
この4つだけです(続)
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by tetsu_mod | 2015-01-26 23:26 | オーディオ | Comments(0)

Linkwitz Transform-1

クロスオーバーが完成したSCM12sl/Ⅱですが(勝手に命名)、
低域の再生限界は純正状態と変わらず、62Hzです(-6dB, free-standing、near field)。
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密閉型スピーカーはユニット特性と箱容積・吸音材のみで低域再生限界が決まり(箱の強度を無視した場合)、低域再生の量感などは一般的にバスレフ型に劣ります。市販スピーカーの8割以上がバスレフのようです。

密閉型で低域再生を伸ばそうと思えば、ユニットを大きくするか、エンクロージャーを大きくするor吸音材は大量に入れて見かけ上のエンクロージャー容積を大きくする、です。KEF社ではACE技術という名称で活性炭をエンクロージャー内にいれ、2倍の容積をスピーカと同様の低音特性をうたっています。
http://kef.com/html/jp/innovation/ace/index.html
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(http://www.kef.jpより)

この活性炭は一時期、日本でも自作スピーカーで盛り上がりましたね。
しかし、湿気などで活性炭が長持ちするかと言うと...


そこで、物理的手法による低域拡大をあきらめ、6年前から試してみたかった、Linkwitz Transform を行うことにしました。
http://www.linkwitzlab.com/filters.htm
http://sound.westhost.com/linkwitz-transform.htm
http://www.sound.westhost.com/project71.htm

これはクロスオーバースロープ(リンクウィッツ・ライリー)で有名なLinkwitz氏が考案したウーファーの低域特性補正回路です。もともとはプリ〜パワーの間に挟むアクティブフィルターとして提唱されました。理詰め設計のスピーカーの金字塔の一つ、Audio Machina社のThe Ultimate MonitorにもThe Bomb (Bottom Octave Magic Box)という名前で採用され、70Hz(-1dB)⇨25Hz(-3dB)まで拡大します。(と言いつつ、このスピーカー聴いたことありません。いつか聴いてみたい。)

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http://www.zephyrn.com/products/audio_mac/ultimate.html


実はLinkwitz Transformはオープンバッフル(平面バッフルもしくは後面開放)もしくは密閉型しか対応しません。もちろんSCM12sl/2は密閉ですので、導入できないかと考えました。(続)
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by tetsu_mod | 2015-01-25 19:40 | オーディオ | Comments(0)

完成から1週間、理論的な能書きはもういいとして。
聴いてみてどうかですが...



気に入っています。
SCM12slも12年をこえ、私のオーディオ歴でほぼこのスピーカーしか使ったことがないため、
実は、今更このスピーカーがいい音かどうかがイマイチピンと来ません。

しかし、それでも前よりも音が立体的になった気がします
また、スウィートスポットは明らかに広くなり、低域の見通しもよくなりました。
2wayのつながりもいいと思います。
(DIYバイアスかかっていますw)

反面、中低域の密度感は前のほうがあったと思います。
『ATCらしくない』かもしれませんが、vo.の密度感や粘りはあるので、個人的にはOKの範囲です。

これで、『クロスオーバー』はいったん終了です。
再開するとしたら、インピーダンス補正回路かな...
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by tetsu_mod | 2015-01-24 00:24 | オーディオ | Comments(4)

反省編、その2です。
書ききれなかった3.インピーダンス、4.電気位相回転について。

3.インピーダンス
 クロスオーバーの設計は、本当は今年の春ぐらいまでかけてゆっくりするつもりでしたが、横浜ベイサイドショップがジェンセンの取り扱いを終わる&ウィンターセールということで、後半はかなり大急ぎで作りました。

その結果、今回のクロスオーバー設計では、最低インピーダンスは9kHzで2.21Ωになってしまいました。
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3rd orderやシリーズクロスオーバーなどを用いれば、もっとインピーダンスの高い回路が組めたかもしれません。しかし、私では設計しやすいシリーズクロスオーバーでしか、目標とした周波数特性・ユニット位相差を組めませんでした。腕が足りませんね。

ちなみにStereophileの記事によると、興味深い事に最低インピーダンス周波数には国籍があるそうで、イギリス製は大体10kHz前後、アメリカ製では中低域程度だそうです。どうもイギリス製のほうがクロスオーバーに凝っており、アメリカ製はウーファーユニット数が多いのではないかと思っていますが...



4.電気位相回転(インピーダンス位相角)
こちらもStereophileの記事からですが、インピーダンス変動の位相角に応じて電流は電圧に先んじたり遅れたりするが、最悪の場合(位相角が±90°)、電圧がゼロにも関わらず最大電流となります。このようなインピーダンス変動とはアンプ出力段の負荷になり、予想の出力の120%から270%になるそうです。

今回の私の作製例(上の写真、左上のインピーダンスカーブの点線がインピーダンス位相角です)でも、ウーファーf0以外でクロス周波数付近でインピーダンス位相角が-70〜+40°程度とかなり動いています。

このような位相角の変動が出力の大きな(もしくは大きな電源設計の)アンプが必要になる理由の一つと考えられています。つまり、公称8Ωのスピーカーでも8Ωの純抵抗のように扱えるわけではなく、また能率120dB/w/1mだったとしても、1w出力で十分に120dBの音楽信号を再生できるわけではありません。ここにはさらにダンピングファクターも関わってきますね。


そこで、ディナウディオやティールはこの問題に対する一つの回答として、スピーカー全体のインピーダンス変動補正回路を入れています。これはディナウディオFocus110のクロスオーバー回路図です。
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ウーファー・ツィーターともに1次回路(0.9mH,6.8mF)ですが、どちらもインピーダンス上昇補正回路(16mF+4.7Ω, 6.8Ω+1.5mF)があり、さらにツィーターには位相差補正のためにラダーディレイ回路(0.56mH*2,15mF*2)が入っていますが、さらにクロス周波数付近でスピーカー全体のインピーダンス上昇を補正する回路(6.8Ω+32mF+0.13mH)が特徴です。

別の解決策としてはバイアンプですが、せっかくユニット間の位相差を揃えた設計をしたのに、まったく違うアンプでバイアンプした場合は保証の限りではないと思われます。全く同一のアンプなら別だとは思いますが、個体差まではどうなんでしょう... 同様に、アクティブクロスオーバーでマルチアンプ駆動の場合は、アンプ+スピーカーでの位相差を調製すべきでしょう。
それを嫌ってバイワイヤで済ますことも考えられますが、バイワイヤにあまり意味があるとは思えないんですよね..個人的には。 全体のインピーダンスまで考えたときには、シングルワイヤリングにしてしまうのも確かに一つの解答として納得できるものです。


そこで、このインピーダンス補償回路をシミュレーションしたのがこちら。
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周波数特性もreverse null(=ユニット位相差)も変化ないですが、インピーダンスは変動・位相角回転ともに補正されます。
黄/青:補正後、 黒:補正前
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位相角回転はWf f0以外では-30〜+30°程度に収まっています。
一方、最低インピーダンスはさらに2.11Ωまで下がってしまいますが...
180uH + 47uF + 5.1Ωだけですので、この補正回路はオプションとして今後、実験してみようと思っています。

ただ、Lab.Gruppen IPD1200との組み合わせでは、今のところは特に問題なく鳴っています。
技術的な反省編は以上になります。
やはり、うまく行ったという手応えより、ああしたかった、こうだったら良かったのに、という反省のほうが多いです。メーカーのスピーカー設計者の方々を尊敬せずにはいられませんね。
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by tetsu_mod | 2015-01-21 00:34 | オーディオ | Comments(2)

今回の作製における反省点は以下の4つです。
1.エンクロージャー
2.ウェーブガイド
3.インピーダンス
4.電気位相回転


1.エンクロージャー
 SCM12slは、ATC社の名機、SCM20のダウングレードモデルです。ウーファーは同一ユニットですが、ツィーターが廉価版に、クロスオーバーは使い回し、そしてエンクロージャーは小さく、薄くなりました。密閉型ですので、エンクロージャー容積の縮小は低域再生能力の低下を意味します。
周波数帯域(-6dB, free-standing、near field)
SCM12sl : 62Hz 〜 20kHz
SCM20sl : 60Hz ~ 20kHz
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ちなみにこのウーファー、フリーエアではfo=55Hz程度です。
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また、エンクロージャー容量以外にも、バッフルステップの問題がありました。
バッフルステップはバッフル面積がある以上は必ず発生しますが、ラウンド加工をすることで回析が分散し、特に高域でのリップルが減少します。
今回のSCM12sl-modでのツィーター位置、バッフルサイズにおいて、ラウンド加工のありなしでツィーター軸1mでのバッフルステップシミュレーションの比較がこちらです。
ラウンドバッフルなし
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1インチ(2.54cm)ラウンドバッフルあり
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周波数特性のフラットをおう以上は看過できないリップルの差です。
実際、ATC社のミドルモニター、SCM100においてはコンシューマーは昔のままのバッフルですが、プロ用はラウンドバッフルに変わっています。
ATC SCM100sl/Ⅱ
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ATC SCM100slA pro
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(いずれもエレクトリ社から画像拝借)

ウェーブガイドを採用することで、バッフルステップの影響を軽減できるとの説もありますが、最終的な今回のツィーターの裸特性とバッフルステップシミュレーションの比較がこちらです。
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他にも、吸音材がたっぷり充填されておりインピーダンスカーブに観測されるほどのエンクロージャー内定在波はないものの、真四角のエンクロージャー形状などの問題もあります。


これらの解決策として、
・エンクロージャーを作り直す
・バッフルにラウンド加工を施す を検討しました。

エンクロージャーは完全新規でなくとも、Dayton Audio TWC-0.75を使って、バッフルのみ新規作り直すなどが候補になります。
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これならばラウンドバッフル・ラウンドエンクロージャーですしね。

また、エンクロージャーはそのままにバッフルにラウンド加工は、サブに持っているATC SCM7でも採用されてるデザインです。
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しかし、見た目もオーディオ製品の性能の一部であるなら、学生時代にバイトして購入してから12年使ったスピーカーの外観が変わることがどうしても我慢できませんでした。そこで、今回はエンクロージャーに関してはそのままにすることにしました。

2.ウェーブガイド
 ウェーブガイドに関しては、1.とも関連するのですが、もっと開口部が大きいウェーブガイドも設計できるのですが、やはりバッフルにさらに加工するのが嫌だったのと、失敗だった場合純正のプレートに戻せるように担保にしていましたので、純正ツィータープレートと同じサイズで設計しました。
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さらに周波数特性においても、ホーン領域が終わる周波数での音圧の乱れが取れませんでした。
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8-9kHzにおいての部分です。

心当たりとしては、ホーンのカーブが素人計算だったことと、もう一つはホーンのスロート側を、ツィーターエッジのところまで追い込んだ設計が出来ていませんでした。
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上の赤線が今回の設計です。
下の青線のように設計しなければいけませんでした...
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また、ツィーターの取り付け穴がホーンの途中に開口してしまったのも、工夫が足りませんでした。こちらはタングステン粘土で埋めましたが、もっと美しい仕上げができたはずです。


かなり長くなったので、3.インピーダンス、4.電気位相回転は記事を分けます。
当たり前ですが、反省編のほうが圧倒的に長いですね(笑)
素人設計の悲しいところです。
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by tetsu_mod | 2015-01-20 13:55 | オーディオ | Comments(0)

ATC SCM12slをベースにした改造および新規クロスオーバーの作製ですが、一段落したので振り返っての記事を書こうと思います。

今回の作製では、以下の3つを大要素としての目標にしました。
1.ツィーター軸上1mでフラットな周波数特性
2.サービスエリアを広くする
3.ユニットの繋がりをよくする

1.ツィーター軸上1mでフラットな周波数特性
 オーディオ趣味においては「フラットが正しいのか?」「フラットは求めていないから」と言われる方もいらっしゃいますが、多くのサンプルを集めた場合、1mでの周波数特性のフラットさと、人間が好ましいと感じるかどうかははっきり関連があるそうです。「フラットなんてつまらないよ」と言われたこともありますが、私はフラットを売りにしているスピーカーたちも好きなので、今回は±2.5dBの周波数特性を目標にしました。

 いわゆる自作スピーカーや自作アンプが独りよがりな音質に陥りがちな原因として、『部屋を含めた個人の環境でいいものが、別の環境でもいいとは限らない』があると思います。特にスピーカーは直接音を聴感のみで客観的評価をすることが非常に困難だと思います。そこで、疑似無響音室測定を用いることで、一般住宅でも部屋の影響を排除した測定が可能でした。それに伴い、今回の作製でマイクの買い替え(実はこれが一番コストが高かった)ましたが、おかげで結果としては満足のいく測定と周波数特性ができました。だいたい、80-15kHzの範囲で±2.5dBを達成しています。

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 さらに、今回の周波数特性においてはエンクロージャーのバッフルステップも補正しています。これはバッフル縁での回析・反射によるもので、今回はウーファーでは100Hz程度から上昇し、最大で+8dBの増幅が見られます。そして、ATC社のクロスオーバーや特性表記ははバッフルステップを考慮していません。壁に埋め込んだり、50cm程度の近接距離で聴くのであればバッフルステップ上昇は考慮しなくてもいいのかもしれませんが、拙宅での使い方、すわなちフリースタンディングで1.2〜1.8m距離での試聴においては、これを補正することにしました。

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2.サービスエリアを広くする
 3にも関連しますが、これはクロスオーバー帯域および高域のサービスエリアの補償です。クロスオーバーにおいては、もっとも上下方向にサービスエリアがひろく、周波数フラットネスが見込めるLinkwitz-Riley slope 4次のクロスオーバーを採用しました。また、4次という高次のスロープを採用しましたが、電気的には2次の回路で、音響的に4次になるように設計しています。
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左右方向のサービスエリアでは、純正の2.8kHz or 2.5kHzというクロス周波数から、2kHzクロスに下げています。これはウーファーの指向性の問題で、クロスが低いほどウーファー側からみた指向性は改善されますが、ツィーター側の耐入力としては悪化します。
 高域に関してはツィーターウェーブガイドを導入しました。簡単に言えばショートホーンですが、これにより高域の指向性の改善、歪み率の改善、耐入力の改善、ツィーター・ウーファー間の位相差の改善などの複数の要素に対応しています。
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 これらの結果、水平方向±30°で±3.5dB(80-15kHz)という指向性特性にできました。

 拙宅は床生活なので、すぐにゴロゴロしてしまうのですが、どこで聴いても定位感やバランスがあまり変わらない、という特性は非常にありがたいです。

 ただし、バッフルステップ補正やウェーブガイドの効果が十分に発揮するためにも、70cm以上は離れる必要があります。逆に超ニアフィールドには向かないかも知れませんね。

3.ユニットの繋がりをよくする
 ユニット間でバラバラに聴こえたり、繋がりよく聴こえない時は、ユニットのf0周囲での暴れや、break-upや固有振動をコントロールできていない場合や、クロス周辺においてのユニット間の位相差(絶対位相ではない)がマッチしていない場合が考えられます。
 今回はLinkwitz-Riley 4thクロスにおいて、逆相接続の場合ユニット間位相差が180°になり、合成音圧が打ち消し合うreverse nullを指標にしました。
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クロス周波数である2kHzでのユニット位相差は0.11°になり、かつ、ウーファーはコイル成分上昇の補正や、break-up補正のノッチフィルターを導入し、非磁性流体モデルのツィーター側にはf0でのインピーダンス補正を導入しています。
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とは言っても、ウーファーとツィーターの間はホーンによる合成音圧の領域もありますから、繋がるようには思えないかと思います。うまく繋がっているかの評価は、先日のオフ会で
>非常に複雑なネットワークみたいだったので、どんな音かなと思っていましたが、極めて真っ当な音でした。ウーファーとトゥイターは必ずしも同じ質感だとは思えなかったのですが、違和感なくうまく繋がっていました。
とのコメントをもらえました。市販・自作を問わず、リボン、紙、メタルなどの様々な素材のユニットやバスレフ、密閉、ホーンなどの組み合わせでも、しっかり繋がってるスピーカーも数多くあります。理想的に全く同じ質感になるためには、ウーファーとツィーターが全く同じユニットである必要がありますし、それってフルレンジだし、それならフルレンジ一発で聴けばいいし、フルレンジも高域に向かって分割共振の問題がありますしetc...
 マルチウェイにおいてユニットの繋がりは、やはりユニットの癖の調整と、ユニット位相差のコントロールが肝要だと思いますし、そこがスピーカー制作者の腕の見せ所なのだと思いました。

また、コメントで非常に複雑なネットワークとの指摘もありましたが、市販の2wayスピーカーで用いられているクロスオーバー素子数をざっと調べてみると、

B&W 805S 3個
ATC SCM12sl、20sl 9個
Audiomachina Ultimate monitor 10個
LS3/5a 13個
Dynaudio FOCUS110 14個

今回の僕の改造では素子数が14個です
海外DIY有名サイトの作例では、
Audioexcite Excellent two 8個
Humble homemade Hi-Fi Orfeo 16個
Zaph audio ZD5 18個
となっています。非常にメーカーの個性が出て面白いですが、我々コンシューマーはクロスオーバーに合わせたユニット開発が出来ないため、必然的に補正用の素子が増える傾向にある気がします。


そして、今回の一連の設計・作製において、私は特別なことをしたわけではなく、本や論文、インターネットに載っているスタンダードの範囲内で設計・作製しています。実は世界的にみると、コンデンサ一発やコイル一発でクロスさせて聴感で追い込む日本式(長岡式?)設計のほうが特別なようです。こんなところにもガラパゴス化が?

さて、今回はうまく行った箇所ですが、次回は反省点です...
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by tetsu_mod | 2015-01-19 19:55 | オーディオ | Comments(2)

クロスオーバーが完成したばかりですが、はやぶささん、せんべいさん、どすこいさんが遊びに来てくれました。
なにも準備が出来ないので、前日に蜜蝋ワックスだけ塗り塗りと..

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はやぶささんは11年前に同じくSCM12slを所有されていたそうですが、
どうもうちのスピーカーはエンクロージャーの色がかなり濃くなっているようです。
言われてみると、最初はもっと黄色かった気がします。毎日見てると分からないものですね。


その後、本日のメインイベントのどすこいさん宅へ。
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相変わらずsweetで緻密な音です。
いいなー、こんな出かたはうちでは絶対にしません。


アンフィニミュージックに立ち寄って、焼き肉で締め。
はやぶささん、せんべいさん、どすこいさん、社長、お世話になりました。
また遊んで下さい。
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by tetsu_mod | 2015-01-18 22:45 | オーディオ | Comments(4)